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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)6772号 判決

大阪府堺市原山台一丁六番一-一一〇二号

第一事件原告(以下「原告」という。)

株式会社カトー

右代表者代表取締役

加藤日出夫

北九州市小倉南区大字南方四五四番地一

第一事件原告・第三事件被告

株式会社アーランド

(以下「原告」という。)

右代表者代表取締役

渡邊新司

新潟県燕市大字小池三三七九番地

第一事件原告・第二事件被告

株式会社相忠

(以下「原告」という。)

右代表者代表取締役

相場忠敏

右三名訴訟代理人弁護士

小原望

叶智加羅

東谷宏幸

北九州市小倉北区緑ケ丘三丁目六番九号

第一事件被告・第二、第三事件原告

カースル産業株式会社

(以下「被告」という。)

右代表者代表取締役

渡辺健司

右訴訟代理人弁護士

辰巳和正

右訴訟復代理人弁護士(第一事件につき)

小村建夫

右輔佐人弁理士(第二・第三事件につき)

綾田正道

平田義則

主文

一(第一事件について)

1  被告カースル産業株式会社は、登録番号第一八四三二〇八号実用新案権に基づいて、原告株式会社アーランドに対し、別紙物件目録(三)-一(但し、〔使用状態〕の図のうち、換気扇本体の後部に切欠部が形成されている点は除く。)記載の換気扇取り付け用フィルター装置の製造、販売の差止を求める権利を有しないこと、並びに原告株式会社カトー及び原告株式会社相忠に対し、同換気扇取り付け用フィルター装置の販売の差止を求める権利を有しないことをそれぞれ確認する。

2  原告株式会社カトーのその余の請求を棄却する。

二(第二事件について)

1  原告株式会社相忠は、別紙物件目録(一)及び同目録(五)記載の各換気扇取り付け用フィルター装置を販売してはならない。

2  原告株式会社相忠は、被告カースル産業株式会社に対し、金一〇万円及びこれに対する平成三年一〇月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告カースル産業株式会社のその余の請求をいずれも棄却する。

三(第三事件について)

1  原告株式会社アーランドは、別紙物件目録(一)及び同目録(五)記載の各換気扇取り付け用フィルター装置を製造し、販売してはならない。

2  原告株式会社アーランドは、被告カースル産業株式会社に対し、金五〇万円及びこれに対する平成三年一一月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告カースル産業株式会社のその余の請求をいずれも棄却する。

四 訴訟費用は、第一ないし第三事件を通じ、原告株式会社カトーと被告カースル産業株式会社との間では、原告株式会社カトーに生じた費用の五分の一を被告カースル産業株式会社の負担とし、その余を各自の負担とし、原告株式会社アーランド及び原告株式会社相忠と被告カースル産業株式会社との間では、被告カースル産業株式会社に生じた費用の五分の一を原告株式会社アーランド及び原告株式会社相忠の負担とし、その余を各自の負担とする。

五 この判決の第二項1、2及び第三項1、2は、いずれも仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

(第一事件)

一  主文第一項同旨

二  被告カースル産業株式会社は、原告株式会社カトーに対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成三年九月一日(第一事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  第二項につき仮執行の宣言

(第二事件)

一  原告株式会社相忠は、別紙物件目録(一)記載の換気扇取り付け用フィルター装置、同目録(二)記載の交換用フィルター、同目録(三)-二記載の換気扇取り付け用フィルター装置、同目録(四)-二記載の交換用フィルター、同目録(五)記載の換気扇取り付け用フィルター装置及び同目録(六)記載の交換用フィルターを販売してはならない。

二  原告株式会社相忠は、その本店及び営業所に存する前項記載の各物件を廃棄せよ。

三  原告株式会社相忠は、被告カースル産業株式会社に対し、金一〇〇万円及びこれに対する平成三年一〇月一八日(第二事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  仮執行の宣言

(第三事件)

一  原告株式会社アーランドは、別紙物件目録(一)記載の換気扇取り付け用フィルター装置、同目録(二)記載の交換用フィルター、同目録(三)-二記載の換気扇取り付け用フィルター装置、同目録(四)-二記載の交換用フィルター、同目録(五)記載の換気扇取り付け用フィルター装置及び同目録(六)記載の交換用フィルターを製造し、販売してはならない。

二  原告株式会社アーランドは、その本店及び営業所に存する前項記載の各物件を廃棄せよ。

三  原告株式会社アーランドは、被告カースル産業株式会社に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する平成三年一一月二二日(第三事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  仮執行の宣言

第二  事案の概要

【事実関係(証拠等を注記した部分以外は争いがない。)】

一  被告カースル産業株式会社の実用新案権

1  被告カースル産業株式会社(以下単に「被告」という。)は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。

(一) 考案の名称 換気扇取り付け用フィルター装置

(二) 出願日 昭和五八年六月一四日(実願昭五八-九二〇一〇号)

(三) 出願公告日 平成二年二月一日(実公平二-四三五二号)

(四) 登録日 平成二年一二月一二日

(五) 登録番号 第一八四三二〇八号

(六) 実用新案登録請求の範囲

「前面に所要本数の梁部材を渡設し、取付けようとする換気扇の正面を覆う横向き筒状本体部と、同筒状本体部の外表面部全体を囲撓(「囲繞」の誤記と認める〔甲第一三号証〕。裁判所注記)し更に後面開口縁部内周面側に所要長さ折り込み可能な広さを有する交換フィルター部材と、折り込まれた上記交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え、上記交換フィルター部材が上記筒状本体部の外側全面を覆うことを特徴とする換気扇取り付け用フィルター装置。」(別添実用新案公報〔以下「公報」という。〕参照)

2  本件考案の構成要件

本件考案の構成要件は次のとおり分説するのが相当である。

A 前面に所要本数の梁部材を渡設し、取付けようとする換気扇の正面を覆う横向き筒状本体部と、

B 同筒状本体部の外表面部全体を囲繞し更に後面開口縁部内周面側に所要長さ折り込み可能な広さを有する交換フィルター部材と、

C 折り込まれた上記交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え、

D 上記交換フィルター部材が上記筒状本体部の外側全面を覆うことを特徴とする

E 換気扇取り付け用フィルター装置。

3  本件考案の作用効果

本件明細書に記載された本件考案の作用効果は次のとおりである。

(一) 「換気扇への取り付け状態においては交換フィルター部材のみが表面に表れるのみであるため、筒状本体部や仮止め手段に油やほこりが付着することがなく、従って交換フィルター部材を単に新しいものと交換するだけですみ、迅速かつ手軽に交換作業を行うことができる。」(公報5欄2行~8行)

(二) 「仮止め手段が筒状本体部の内部であるから、油やほこり等の付着がなく、従って交換作業の際に手を汚すこともない。」(同5欄8行~10行)。

二  被告及び原告らの営業と競争関係

1  被告は、プラスチック製日用雑貨及び家庭用雑貨製品の製造、販売等を業とする会社であり、本件考案の実施品である換気扇取り付け用フィルター装置及び右装置用の交換フィルターを製造、販売している。

2  原告株式会社カトー(以下「原告カトー」という。)は刃物販売、大工、園芸用品販売等を業とする会社、原告株式会社アーランド(以下「原告アーランド」という。)はプラスチック製家庭用品の製造、販売等を業とする会社、原告株式会社相忠(以下「原告相忠」という。)は建築金物及び家庭金物の販売等を業とする会社である。なお、原告アーランドの代表取締役渡邊新司は、被告の代表取締役渡辺健司の実弟であり、昭和四三年頃から昭和六三年九月頃まで被告に在籍し営業業務に従事していたが、その後健司と喧嘩別れして独立し、同年一一月一〇日に原告アーランドを設立したという経緯がある(原告アーランド代表者、被告代表者、弁論の全趣旨)。

3  原告アーランドは、各種の換気扇取り付け用フィルター装置及び右装置用の交換フィルターを製造、販売し、原告カトーと原告相忠は、右各製品を原告アーランドから購入し小売業者等に卸販売している(弁論の全趣旨)。

三  原告らの行為

1  第一装置・第一フィルター

原告アーランドは、平成元年二、三月頃から、業として、別紙物件目録(一)記載の換気扇取り付け用フィルター装置(以下「第一装置」という。)及び右装置用の同目録(二)記載の交換フィルター(以下「第一フィルター」という。)を製造、販売し、原告カトーと原告相忠は、その頃から、業として、右各製品を原告アーランドから購入し小売業者等に卸販売した(原告アーランド代表者、原告カトー代表者、弁論の全趣旨)。

2  第二装置・第二フィルター

原告アーランドは、平成二年二月頃から、業として、別紙物件目録(三)-一記載の換気扇取り付け用フィルター装置(但し、右装置の特定については、後記四の当裁判所の認定判断を参照。以下「第二装置」という。)及び右装置用の同目録(四)-一記載の交換フィルター(但し、右フィルターの特定については、後記四の当裁判所の認定判断を参照。以下「第二フィルター」という。)を製造、販売し、原告カトーと原告相忠は、その頃から、業として、右各製品を原告アーランドから購入し小売業者等に卸販売している(原告アーランド代表者、原告カトー代表者、弁論の全趣旨)。

3  第三装置・第三フィルター

原告アーランドは、平成元年二、三月頃から、業として、金属製の枠体が伸縮する点以外は第一装置と同一構造を有する別紙物件目録(五)記載の換気扇取り付け用フィルター装置(以下「第三装置」という。)及び右装置用の同目録(六)記載の交換フィルター(以下「第三フィルター」という。)を製造、販売し、原告カトーと原告相忠は、その頃から、業として、右各製品を原告アーランドから購入し小売業者等に卸販売した(原告アーランド代表者、原告カトー代表者、弁論の全趣旨)。

四  第二装置及び第二フィルターの特定

第二装置及び第二フィルターの特定については当事者間に争いがあるところ、被告の主張は要するに、原告ら主張の別紙物件目録(三)-一及び同目録(四)-一記載の特定では本件考案と右装置及び右フィルターとの同一性を示す重要な使用方法の記載が欠落しており、特定として不十分、不適切であるというにある。そして、原告ら主張の別紙物件目録(三)-一記載の換気扇取り付け用フィルター装置及び同目録(四)-一記載の交換フィルターが、被告主張の同目録(三)-二記載の換気扇取り付け用フィルター装置及び同目録(四)-二記載の交換フィルターに対応するものであることは、原・被告の各主張の対比及び弁論の全趣旨から明らかである。

ところで、実用新案権に基づく侵害差止請求訴訟ないし右侵害差止請求権不存在確認請求訴訟において審理の対象となる侵害行為(特にその製造、販売が実用新案権侵害と主張される対象物)の特定については、社会通念上差止の対象として他と区別できる程度に具体的に記載されることを要するとともに、登録実用新案の技術的範囲に属するか否かを判断するために当該考案の構成要件と対比できるように具体的に記載されることを要し、かつ、それをもって足りるものというべきである。右観点から、原告らが製造、販売している第二装置及び第二フィルターの現物(検甲第一号証)及び写真(検甲第四号証~第一五号証)並びに原告アーランド代表者の供述によりこれを特定すると、原告ら主張の別紙物件目録(三)-一及び同目録(四)-一の記載のとおり認めるのが相当である(但し、〔使用状態〕の図のうち、換気扇本体の後部に切欠部が形成されている点は除く。)。

被告は、第二装置及び第二フィルターを、別紙物件目録(三)-二及び同目録(四)-二の各構造の説明欄記載のとおり特定すべき旨主張するが、右各目録の記載は、本件訴訟において後記のとおり争点となっている第二装置における本件考案にいう仮止め手段に関する被告の主張を前提とするものであり、右のように特定するともはや原告らにおいて右の点について争う余地がなくなりかねないのであって、訴訟の対象物の特定としては必ずしも適当ではない。

五  被告の第二装置に関する原告カトーと原告相忠に対する販売中止要求

被告は、原告カトー及び原告相忠に対し、同原告らが業として第二装置を販売する行為が、本件実用新案権若しくはその仮保護の権利を侵害するとして、右販売の中止を要求した。

六  第一装置及び第一フィルターに関する被告の原告カトー及び株式会社ニチイに対する販売差止請求訴訟の提起

被告は、平成三年一月一〇日、原告カトー及び株式会社ニチイ(以下「ニチイ」という。)を共同被告として、右両名が業として第一装置及び第一フィルターを販売する行為が本件実用新案権を侵害するとして、福岡地方裁判所小倉支部に右各製品の販売差止請求訴訟を提起した(同支部平成三年(ワ)第一八号事件。以下「別件訴訟」という。)。

七  原告らの第一事件の提訴(本件訴訟手続上明らかな事実)

これに対し、原告らは、平成三年八月二六日、被告に対し、第二装置は本件考案の技術的範囲に属しないとして、

1  本件実用新案権に基づく被告の原告アーランドに対する第二装置の製造、販売の差止請求権が存在しないことの確認及び被告の原告カトー及び原告相忠に対する右装置の販売の差止請求権が存在しないことの確認(差止請求権不存在確認請求)、

2  被告は、原告カトー及び原告相忠が業として第二装置を販売する行為が本件実用新案権を侵害するとして、同原告らに対し右装置の販売中止を要求し(後には原告相忠、原告アーランドに対しそれぞれ第二、第三事件を提起し)、また、平成二年一〇月頃から原告カトーの取引先に対しても原告カトーとの取引の中止を求めたが、被告の右各行為は不法行為に該当すると主張して(その後、後記一〇の原告アーランドの取引先に対する書面配付行為が不法行為に該当するとも主張。)、原告カトーが右不法行為によって被った損害合計五〇〇万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成三年九月一日(第一事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払

を求める第一事件の訴えを大阪地方裁判所に提起した。

八  被告の第二・第三事件の提訴及びその後の経緯(本件訴訟手続上明らかな事実)

1  提訴

(一) 第二事件

被告は、平成三年一〇月三日、原告相忠を被告として、同原告が本件考案の出願公告の日である平成二年二月一日以降も、業として第一装置及び第一フィルターの販売を継続し、また平成二年八月以降業として第二装置及び第二フィルターを販売し、本件実用新案権を侵害しているとして、

(1) 右各物件の販売の差止と廃棄(実用新案法二七条一、二項に基づく差止、廃棄請求)、

(2) 被告の逸失利益額若しくは原告相忠の得た純利益額又は実施料額相当の損害賠償金一五〇万円のうち一〇〇万円及びこれに対する平成三年一〇月一八日(第二事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払(実用新案法二九条二項に基づく本件考案の実施料相当額をもって自己の受けた損害とする主張は明示されてはいないが、弁論の全趣旨に徴すればかかる主張も予備的に含 まれるものと解される。)

を求める第二事件の訴えを福岡地方裁判所小倉支部に提起した(同支部平成三年(ワ)第八六二号事件)。

(二) 第三事件

被告は、平成三年一〇月二二日、原告アーランドを被告として、右(一)と同じ請求原因(但し、原告アーランドの行為は「製造、販売」)で、

(1) 前項記載の各物件の製造、販売の差止と廃棄(実用新案法二七条一、二項に基づく差止、廃棄請求)、

(2) 被告の逸失利益額若しくは原告アーランドの得た純利益額又は実施料額相当の損害賠償金二〇〇〇万円及びこれに対する平成三年一一月二二日(第三事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払(実施料相当額の損害の主張については、右(一)(2)と同じ。)

を求める第三事件の訴えを同支部に提起した(同支部平成三年(ワ)第九二八号事件)。

2  その後の経緯

福岡地方裁判所小倉支部は、第二事件については平成四年三月三一日付で、第三事件については同年五月六日付で、それぞれ大阪地方裁判所に移送する旨の決定をし、当裁判所は、移送を受けた右各事件の弁論を第一事件の弁論に併合した。

被告は、提訴後新たに、原告相忠及び原告アーランドが第三装置及び第三フィルターも業として製造、販売していることが判明したとして、平成五年四月二七日の本件第九回口頭弁論期日において、同日付各訴変更申立書により、第二・第三事件の訴えについて、第三装置及び第三フィルターをそれぞれ侵害差止及び損害賠償請求の対象物件に追加して、訴えを追加的に変更した。

九  別件訴訟における裁判上の和解の成立

平成三年一一月二五日、福岡地方裁判所小倉支部で、別件訴訟について当事者間に以下の趣旨の条項で裁判上の和解(以下「本件和解」という。)が成立した(乙第四号証)。

「一 原告カトー及びニチイは第一装置及び第一フィルターを販売しないことを被告に対し確認する。

二 原告カトー及びニチイは被告に対し、原告カトー及びニチイの本店及び営業所に存する前項の物件を廃棄する。

三 原告カトー及びニチイは連帯して被告に対し本件和解金として金五〇万円を平成三年一二月二〇日限り被告代理人名義の銀行普通預金口座に振込んで支払う。

四 被告はその余の請求を放棄する。

五 訴訟費用は各自の負担とする。」

一〇 被告による原告アーランドの取引先に対する書面配付行為

被告は、平成三年一二月頃、原告アーランドの取引先である株式会社藤村に対し、本件和解調書の写しを添付して、「……当社所有の実用新案に抵触している『換気扇取付フィルター装置及び交換用フィルター』を取扱いしていました株式会社ニチイ様が、今般、別紙の和解文の様に当社の権利を侵害していることを認めましたので、報告致します。これを機に何卒当社の換気扇・レンジフードカバー、フィルターの取扱いを前向きにご検討賜り度くお願い申し上げます。」と記載した書面(甲第一五号証。以下「本件書面」という。)を配付した(原告カトー代表者、弁論の全趣旨。以下「本件書面配付行為」という。)。

【争点】

(第一事件)

一 第二装置は本件考案の技術的範囲に属するか(本件考案の構成要件Cは、交換フィルター部材の仮止め手段が、原告らの主張するように換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の内側にあることを意味するか。)。

二 前項が否定された場合、被告による本件書面配付行為等につき不法行為が成立するか。成立する場合、被告が原告カトーに対し賠償すべき損害の額。

(第二・第三事件)

一 第一事件の争点一と同旨。

二 第一・第三装置は本件考案の技術的範囲に属するか。

三 原告相忠及び原告アーランドは、現在第一装置・第三装置を製造、販売しているか。将来そのおそれがあるか。

四 第一ないし第三フィルターは、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造にのみ使用する物か(間接侵害の成否)。

五 原告相忠及び原告アーランドによる本件実用新案権の侵害が肯定された場合、同原告らの故意・過失の有無並びに同原告らが被告に対し賠償すべき損害の額。

第三  争点(第二・第三事件の争点二を除く。)に関する当事者の主張

一  第一ないし第三事件の争点一(第二装置は本件考案の技術的範囲に属するか。)について

1  原告らの主張

本件考案の構成要件Cは、仮止め手段が換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の内側にあることを意味し、したがってこれを必須の構成要件とするものであるところ、第二装置は、右構成要件を具備せず、かつ、作用効果においても本件考案とは大きな違いがあるから、本件考案の技術的範囲には属しない。その理由は以下のとおりである。

(一) 本件考案の構成要件Cの意義

本件考案の実用新案登録出願の審査過程において、特許庁審査官は、昭和六三年四月二〇日付で、〈1〉 実願昭五一-七六六二七号(実開昭五二-一六七六六〇号)のマイクロフィルム、〈2〉 実願昭五五-四九一七三号 (実開昭五六-一四九八三七号)のマイクロフィルム及び〈3〉 実公昭五六-一八九〇八号公報を引用し、この出願の考案は、実用新案法三条二項の規定により実用新案登録を受けることができないとの理由によって拒絶すべきものと認める旨の拒絶理由通知を発した(甲第二号証)。これに対し、出願人の被告は、昭和六三年七月二九日付意見書(甲第三号証)を提出し、右意見書において、本件考案の特徴は「筒状本体部の後面開口縁部の内周面に任意間隔の下に面状ファスナーを取り付け、交換フィルター部材を、後面開口縁部の内周面側に折り込んだ交換フィルター部材の外周縁部を各面状ファスナーの表面に強く押し付け固定する、或いは交換フィルター部材の中央部に筒状本体部を裏返した状態に置き、次にその筒状本体部の外表面を包み込む様に交換フィルター部材の外周縁部を持ち上げて後面開口縁部の内周面側に折り込んだ後、嵌入枠体をその内側に嵌入すれば、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部が上記嵌入枠体の外周面と後面開口縁部の内周面との間に強く挟持された状態に仮止めするものであ」る(2頁13行~3頁6行)点にあり、その点で前記〈1〉の引例考案では、開口部の外周縁に鋸歯状の爪を多数設け、これにネット外周縁を引っかけるようにしているのとは、構成及び作用効果において大きな差異があるなどと主張した。しかし、右意見書によっても前記拒絶理由は解消しないとして昭和六三年一〇月二八日付で拒絶査定を受けた(甲第四号証)。

被告は、右拒絶査定を不服として審判請求をし(甲第五号証)、手続補正書を提出するとともに平成元年二月一三日付審判請求理由補充書(甲第七号証)を提出し、右審判請求理由補充書において、本件考案の特徴を前記拒絶理由通知の挙げた引例と比較しながら、「本考案では……交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面に固定するものであります。従って、本件考案においては、仮止め手段が内側にあり、更には交換フィルター部材の外周縁部も内側にあるので、使用中に外れ難いという特徴を有しますが、引例1考案では開口部の外周縁に鋸歯状の爪を多数設け、これにネット外周縁を引っかけるものでありますから、ネットが外れ易いという問題点があり、……本考案と比較するに構成及び作用において大きな差異があります。」(4頁14行~5頁10行)と主張し、右意見書が受け入れられた結果、本件考案は実用新案登録を受けるに至った。

このように、被告は、本件考案の実用新案登録出願の審査過程において、本件考案の特徴として、交換フィルター部材の外周縁部が換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の後面開口縁部の内周面において固定されている点、すなわち仮止め手段が右筒状本体部の内側にある点を、それまでの先行技術との相違点であるとして強調し、その結果、本件考案は実用新案登録を受けるに至ったのであるから、右出願経緯から考えて、構成要件Cは、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の後面開口縁部内周面に固定すること、すなわち交換フィルター部材の仮止め手段が右筒状本体部の内側にあることを意味し、したがって本件考案はこれを必須の構成要件とし、その点に本件考案の特徴があるものといわなければならない。

(二) 第二装置

これに対し、第二装置は、別紙物件目録(三)-一に記載のとおり、ゴム紐付の第二フィルターを、換気扇本体の前面を覆う枠体と換気扇本体とを外側から覆うようにして右ゴム紐により換気扇本体の側面又は後縁部で係止するものであって、交換フィルター部材の仮止め手段が換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の内側にあるという本件考案の構成要件を具備していないことは明らかである。

被告は、第二装置が本件考案の構成要件Cを具備する理由として、第二装置でも、第二フィルターをその外周縁に取り付けられたゴム紐で枠体の後面開口縁部内周面側に牽引した状態で固定できると主張するが、第二装置の使用方法を本件考案のそれに近づけるために故意に歪めて主張するものであって不当である。第二装置が前記のとおりゴム紐付の第二フィルターによって枠体と換気扇本体とを外側から覆う構造になっていることは、第二装置の実際の使用状況を撮影した検甲第四号証~第一五号証の写真を見ても明らかである。

そして、第二装置は、右のように本件考案とは異なる独自の構造を有するため、以下のとおり、作用効果の面でも本件考案とは異なる独自の作用効果を発揮する。すなわち、

〈1〉 第二装置では、ゴム紐付の第二フィルターが換気扇に取り付けられる枠体のみならず換気扇全体を外側から覆うため、換気扇本体の油汚れも防げるという独自の作用効果を奏する。これに対し、本件考案では、換気扇本体の側面や後縁部は剥き出しのままの状態となり、その部分に油汚れが付着することになる。

〈2〉 第二装置では、枠体を一旦換気扇本体に取り付けると、第二フィルターの交換は、右枠体をその都度換気扇本体から取り外すことなく、第二フィルターのみを取り外すことによって可能であり、第二フィルターの交換が手早く行えるという独自の作用効果を奏する。これに対し、本件考案では、交換フィルター部材の交換の都度、筒状本体部を換気扇本体から取り外し、交換後再度取り付けるという手間が必要であり、交換が非常に面倒である。

〈3〉 第二装置では、換気扇本体に取り付けられる枠体の取付部材自体も、一旦これを換気扇本体に取り付けると、ゴム紐付の第二フィルターによって覆われる状態となるため、油汚れによる付着力の劣化が避けられるだけでなく、ゴム紐付の第二フィルターが換気扇本体の全体を覆うようにして取り付けられるため、右枠体自体をも支える作用を奏するので、枠体が換気扇本体から外れにくくなるという独自の作用効果を奏する。これに対し、本件考案では、通常、筒状本体部を換気扇本体に取り付けるための取付部材は、交換フィルター部材の外側に取り付けられることになるので、取付部材は油汚れから守られず、その分付着力が早期に劣化しやすく、第二装置に比較して筒状本体部が換気扇本体から外れ落ちやすい。また、仮に筒状本体部の換気扇本体への取付部材を交換フィルター部材の内側に付けるようにした場合は、取付部材の油汚れを防ぐことはできるが、その一方で、交換フィルター部材を取り付けたままの状態で筒状本体部を換気扇本体に取り付けるのが非常に難しくなり、交換フィルター部材の交換の際に筒状本体部を換気扇本体から取り外すことも非常に面倒になるし、第二装置のように第二フィルターが筒状本体部を支える構造とはならないため、筒状本体部が自重で換気扇本体から外れ落ちやすくなるという問題点を解決し得ない。

なお、第二装置につき、被告主張の別紙物件目録(三)-二記載のような使用方法を採用した場合、第二装置の右〈1〉~〈3〉の独自の作用効果がすべて減殺されることになってしまうから、第二装置を購入した一般消費者が敢えてわざわざそのような方法でこれを使用するものとは考えられず、第二装置の製造、販売に際してもそのような使用方法は全く想定していない。

2  被告の主張

第二装置は、本件考案の構成要件のすべてを充足し、かつ、本件考案と同じ作用効果を奏するものであるから、本件考案の技術的範囲に属する。その理由は以下のとおりである。

(一) 本件考案の構成要件Cの意義

本件考案は、構成要件Cのとおり、「折り込まれた上記交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段」を備えることを必須の構成要件とするものであって、原告ら主張のように「仮止め手段が筒状本体部の内側にあること」を構成要件とするものではない。

原告らは、原告らの主張の根拠として、被告が提出した意見書や審判請求理由補充書の記載を指摘しているが、右意見書は、面状ファスナー及び嵌入枠体が仮止め手段の実施態様として実用新案登録請求の範囲に記載されている段階で提出されたものであって、その後に実用新案登録請求の範囲が補正されており、また、右審判請求理由補充書の記載は、本件考案では、換気扇への取付け状態では仮止め手段と交換フィルター部材が筒状本体部の内部に位置することになるので使用中に外れにくいし、筒状本体部の外表面部が露出しないから汚れることがないことを強調するために記載したものであって、これらの記載により本件考案が原告ら主張のように限定される理由はない。

そして、仮止め手段については、実用新案登録請求の範囲にその固定方法を限定する格別の記載はなく、本件明細書の考案の詳細な説明にも、右仮止め手段の実施例として、嵌入枠体と面状ファスナーの例を挙げるとともに、「なお、仮止め手段10としては上記実施例に示すもの以外に、例えば両面テープやや(「や」の誤記と認める。裁判所注記)挟持クリップを用いたり、或いは多数の針状係止片による等種々の方法によることができるものであり、要は折り込まれた交換フィルター部材13の外周縁部21を筒状本体部12の後面開口縁部17の内周面20側において仮止め状態となし得るものであればよい。」(公報4欄19行~26行)と記載されている。

したがって、本件考案にいう仮止め手段は、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部の内周面側において仮止め状態となし得るものであれば、筒状本体部の内側にあるものも、外側にあるものも含むのである。

(二) 第二装置

第二装置のフレームと換気扇の前面を覆う枠体は、それぞれ本件考案の梁部材と筒状本体部に該当し、また、第二装置の交換フィルターである第二フィルターが換気扇の側部又は後縁部で係止可能な広さを有するということは、当然に枠体の外表面部全体を覆い、更に後面開口縁部の内周面側に折り込み可能な広さを有するということにほかならないから、第二フィルターは、本件考案の交換フィルター部材に該当する。そして、第二装置の枠体は、弾性取り付け装置によって換気扇本体に取り付けられているので、手で枠体を持って手前に引張ることにより換気扇本体から若干離すことができ、また、第二フィルターも、右のとおり枠体の外表面部全体を覆い、更に後面開口縁部の内周面側に折り込み可能な広さを有し、かつ、周縁部に収縮可能なゴム紐を設けているから、ゴム紐を伸ばして開口部を広げた状態で枠体に嵌めた後にゴム紐を放すことにより、第二フィルターを枠体の内側に折り込み装着することができる。そのような装着状態では、第二フィルターの周縁部をゴム紐で枠体の後面開口縁部内周面側に牽引し折り込んだ状態で固定することができるから、第二装置のゴム紐は、本件考案にいう仮止め手段と同一の作用を奏するものであり、右仮止め手段に該当する。

原告らは、第二装置は、ゴム紐付の第二フィルターを右ゴム紐により換気扇本体の側面又は後縁部で係止するものであると主張し、別紙物件目録(三)-一の図面にはゴム紐を換気扇本体の後部の切欠部と壁面との間の間隙に係止させている状況が図示されている。

しかしながら、換気扇本体の後部に右図面に示されるような切欠部を形成すると、その部分に油や埃が溜るから、市販されている家庭用換気扇で右のような切欠部が形成されている製品は存在しない。切欠部が形成されていない家庭用換気扇の本体に右図面に示されるように第二フィルターを装着すると、ゴム紐の係止部がないため、ゴム紐が次第にずれてきて第二フィルターが換気扇本体から外れるか、あるいはフレームに引っ掛かって膨れた状態になり、見掛けが極めて悪く、到底市場で販売可能な商品とはなり得ない。また、原告アーランドは、「換気扇カバーとその取付構造」という名称の考案につき平成元年六月一三日に実用新案登録の出願をしているが、その公開実用新案公報(乙第三一号証)によれば、交換フィルターの取付方法は、原告らが本訴で主張する方法ではなく、被告主張の方法と同じである。したがって、原告らの主張は失当である。

作用効果についてみても、原告らが本件考案とは異なる第二装置の独自の作用効果であると主張するところは、第二装置を原告ら主張の方法で使用したときの作用効果であるから、これと使用方法を異にする本件考案の作用効果とを対比すること自体妥当でない。第二装置は、その構造上、本件考案と同様に、第二フィルターを枠体に取付けた状態で換気扇本体に装着して使用することもできるものであるから、第二装置をそのような態様で使用した場合の作用効果と本件考案の作用効果とを対比すべきである。そして、第二装置をそのような態様で使用した場合、換気扇本体への取付け状態では第二フィルターのみが表面に表れるだけであるから、枠体の外表面部とゴム紐を汚すことがなく交換作業の際に手を汚すことがないという本件考案と同じ作用効果を奏する。

二  第一事件の争点二(被告による本件書面配付行為等につき不法行為が成立するか。成立する場合、被告が原告カトーに対し賠償すべき損害の額)について

1  原告らの主張

(一) 被告の不法行為

別件訴訟における本件和解で原告カトー及びニチイが第二装置に関して本件実用新案権の侵害を認めた事実はない。別件訴訟において、差止請求の対象とされた換気扇取り付け用フィルター装置は、第二装置とは構造が異なるいわゆる旧型の製品(第一装置)であり、原告らは、本件和解成立時には既にその製造、販売を中止していた。また、差止請求の対象とされた交換フィルター(第一フィルター)は、それ自体では何ら本件実用新案権を侵害しないとの解釈が可能であった。しかし、原告カトー及びニチイとしては、別件訴訟の早期解決に主眼を置いたため、本件和解に踏み切ったのである。すなわち、原告カトーにとってニチイは最大の取引先であり、原告カトーがニチイに販売した製品について右のような訴訟が係属していること自体同社に迷惑をかけることになり、以後の取引にも重大な支障を生ずるため、被告の請求内容の当否はともかくとして、被告と早期に訴訟問題を解決することこそが、原告カトーにとって最大の関心事であったのである。だからこそ、原告カトーは、弁護士費用や和解金はすべて原告カトーにおいて負担することとし、本件実用新案権の侵害の有無の点は和解条項では明確にしないまま、単に差止対象の製品を以後販売しないことを約し、解決金たる性格を有する「和解金」五〇万円を支払うことを合意して本件和解を成立させたのである。そして、本件和解成立当時、原告アーランドは、既に第二装置の販売を開始しており、原告カトーも、第二装置は本件実用新案権に全く抵触しないとの認識の下に、和解成立後はニチイとの間で第二装置を対象とする取引を再開することを予定していた。ところが、被告は、第二装置は何ら本件実用新案権を侵害するものでないことが明白であるのに、原告相忠及び原告アーランドに対し、順次第二装置の製造、販売が本件実用新案権の侵害になるとして、第二・第三事件の差止請求訴訟を提起し、更には原告アーランドの取引先である株式会社藤村に対し、本件書面を配付する行為に及んだ。特に、本件書面には原告カトーの最大の取引先であるニチイの名前の載った本件和解調書が添付されており、しかも、その文面には、「ニチイ様が……権利を侵害していることを認めました」などと実際の和解の経緯とは異なる事実が記載されていた。

原告カトーとしては、ニチイとの間の第二装置の取引再開に際しては、同社が安心して取引再開に踏み切れるよう、本件和解成立後の経過をニチイの担当者に説明する必要があったため、被告による原告相忠及び原告アーランドに対する訴え提起の事実はもとより、本件書面配付の事実も報告せざるを得なかった。その結果、ニチイは、そのような事実がある以上、換気扇取り付け用フィルター装置については安心して取引できないとの社内判断に至り、第二装置を対象とする取引はその後も一切再開されないままの状況が続いている。

そして、被告が配付した本件書面には本件和解調書が別紙として添付されてはいたが、被告は、現に第二装置を取引している原告アーランドの取引先に赴いて、「ニチイ様が……権利を侵害していることを認めました」と記載した本件書面を配付した上、自社製品の売り込みをしたのであり、そのような文書を見せられた取引先が、現に同原告と取引している第二装置も侵害品であると誤解することは容易に予想できるところである。本件和解調書添付の物件目録から、訴訟対象となっていた製品が第二装置と異なるものであるかどうかを直ちに判断することは、製品の製造に係わる者や、弁理士や弁護士等の専門家でない限り通常困難である。のみならず、本件書面の右記載内容は、前記のとおり実際の和解の経緯ないし趣旨に反するもので、これを読んだ者の誤解を更に助長するものとなっている。

本来、訴訟当事者でもない者に和解調書を配付すること自体、被告の常識性の欠如が疑われるが、その点を一応措くとしても、単に訴訟の経過と結果を伝えるだけということであれば、被告としては、特に現に市場に流通している第二装置の存在をも念頭において、これとの誤解、混同を生じないよう、両者の区別を明確にする説明を付けるなどの措置を講ずべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と右誤解、混同を助長するような文面の文書を配付したのであるから、被告に故意又は過失のあることは明白である。

したがって、被告は原告カトーに対し右不法行為により原告カトーの被った損害を賠償すべき義務がある。

(二) 被告が原告カトーに対し賠償すべき損害の額

原告カトーのニチイに対する換気扇フィルター装置の売上高は、本件和解の成立前は年間五、六〇〇万円程度であったが、原告アーランドがゴム紐付の第二フィルターを用いる第二装置に製品を切り換えて以降、右売上高は上昇傾向にあった。したがって、ニチイが本件和解成立後第二装置を対象とする原告カトーとの間の取引再開に応じていれば、原告カトーは現在までに一千五、六〇〇万円近い売上を得られたものと考えられる。原告カトーは、原告アーランドの製造に係る製品をいわゆるOEM製品として販売しているが、その場合の利益率は売上額の約四八パーセントであるから、ニチイとの取引が順調に再開されていれば、原告カトーはこれまでに約七〇〇万円の純利益を得られたことになる。しかるに、被告の不法行為により右取引再開ができなかったため、原告カトーは右得べかりし利益を喪失した結果、同額の損害を被ったものであり、右損害と被告の行為との間に因果関係のあることは明らかである。したがって、被告は原告カトーに対し右損害約七〇〇万円を賠償すべき義務があるところ、原告カトーは、本訴においてその一部である五〇〇万円を請求する。

2  被告の主張

本件和解において、原告カトーは、本件実用新案権侵害の事実を認めて第一装置の販売を中止し、製品を廃棄する旨約しているのであるから、本件書面配付行為は、本件実用新案権者である被告が当然なし得る行為であり、不法行為は成立しない。

被告が原告カトーの取引先に対し原告カトーとの取引の中止を求めたことはない。

三  第二・第三事件の争点三(原告相忠及び原告アーランドは、現在第一・第三装置を製造、販売しているか。将来そのおそれがあるか。)について

1  原告らの主張

原告らは、本件考案の出願公告日である平成二年二月一日時点では、既に第一・第三装置の製造、販売を中止しており、今後も製造、販売する意図はない。被告は、現在でも原告らが第一・第三装置を製造、販売している旨主張するが、仮に小売店で第一・第三装置が店頭販売されているとすれば、かつて原告らが製造、販売した製品の在庫商品である可能性もある。

2  被告の主張

原告らは、現在第二装置のみならず、第一・第三装置も製造、販売しており、今後も製造、販売を継続するおそれがある。そのことは、原告ら主張の時点(平成二年二月一日)以降に被告及びその関係者が第一・第三装置を市場で購入している事実から明らかである(乙第一五号証~第一九号証、第二〇号証の1・2、第二一号証~第二三号証、検乙第一号証~第六号証、第七号証の1・2、第一〇号証)。

四  第二・第三事件の争点四(第一ないし第三フィルターは、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造にのみ使用する物か。)について

1  被告の主張

第一ないし第三フィルター(以下、この項ではまとめて「本件交換フィルター」という。)は、専ら本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造にのみ使用する物であるから、実用新案法二八条により本件実用新案権を侵害するものとみなされる。

原告アーランドの配付している「換気扇カバーのご案内」(乙第二五号証)に掲載の一覧表や「換気扇カバー交換用フィルターのご案内」(乙第二六号証)に掲載のフィルター一覧表によると、本件交換フィルターのサイズは、

「A 適用本体Sに対応する交換フィルターのサイズは三五cm×三五cm

B 適用本体Mに対応する交換フィルターのサイズは四一cm×四一cm

C 適用本体Lに対応する交換フィルターのサイズは四六cm×四六cm

D 適用本体伸縮Lに対応する交換フィルターのサイズは四六cm×六一cm」となっており、いずれも筒状本体部の後面開口縁部の各辺より数cmずつ広く、したがって後面開口縁部内周面に折り込み可能な広さを有している。また、被告が製造、販売している交換フィルターのサイズも、

「a 適用本体角Sに対応する交換フィルターのサイズは三五cm×三五cm

b 適用本体角Mに対応する交換フィルターのサイズは四一cm×四一cm

c 適用本体角Lに対応する交換フィルターのサイズは四六cm×四六cm」であり、原告らは、本件交換フィルターを被告の製造、販売している交換フィルターと全く同一のサイズに裁断加工して販売しているものである。

原告らは、本件交換フィルターは、レンジフードやエアコン用のフィルターなど、フィルターの用いられている各種製品に使用可能であり、社会通念上、経済的・商業的ないし実用的と認められる用途が本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造以外にも多数存在するなどとして、実用新案法二八条の「登録実用新案に係る物品の製造にのみ使用する物」には該当しない旨主張する。しかし、本件交換フィルターが、「換気扇カバー交換用フィルター」と銘打って販売されているその販売方法や、前記のとおり換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の後面開口縁部内周面に折り込み可能な広さを有するサイズに裁断して販売されていることからして失当というべきである。また、本件交換フィルターは、レンジフードやエアコンなどのフィルターとは形状や大きさが相違するから、そのままではレンジフードやエアコンのフィルターとして使用することはできず、サイズに合わせて複数のフィルターを使用したり、あるいは一枚のフィルターを小さく裁断して使用しなければならず、そのような態様での使用は、もはや交換フィルター本来の用途とみるべきではない。

2  原告らの主張

本件交換フィルターは、何も特別な加工がされていないポリエステル製の不織布であり、それ自体には何の新規性も独自の技術思想も備えていないものである。そして、本件交換フィルターは、換気扇取り付け用フィルター装置の交換フィルターとしての用途の他に、レンジフードやエアコンのフィルターなど(甲第二五号証)、フィルターの用いられている各種製品に使用可能であり、パッケージにも各種の用途に使用可能である旨表示されている。これは、原告らのみが主張かる特殊な使用の仕方ではなく、原告らとは全く関係のない業者のチラシ(甲第三四号証)でも、ポリエステル製難燃特殊不織布を用いたフィルターをレンジフードやエアコン用のフィルターとして用いることが示されているのである。被告は、本件交換フィルターは、レンジフードやエアコンなどのフィルターとは形状や大きさが相違するから、そのままではレンジフードやエアコンのフィルターなどとして使用することができない旨主張するが、そもそも換気扇本体自体に様々なサイズの製品が存在するのであり、そのため、本件交換フィルターも大小様々なサイズから、切って使えるフリーサイズまで種々のタイプの製品を取り揃えているのであって、本件交換フィルターは、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置のサイズに合わせて作られているわけではない。

換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルターとして用いられる場合に限っても、本件考案に係る製品だけでなく、他社メーカーが製造、販売している各種換気扇取り付け用フィルター装置の交換フィルターとしても使用が可能であり(甲第二三号証、第二四号証)、現実にも一般消費者の間でそのような用い方がされている(甲第二七号証、第三五号証)。

また、原告アーランドがフィルター用部材を仕入れるについては、換気扇メーカーだけでなく、エアコンメーカーなど、およそフィルターを用いる製品を製造、販売している業者を取引相手としているのである。

以上のように、本件交換フィルターは、社会通念上、経済的・商業的ないし実用的と認められる用途が、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造以外にも多数存在するのであるから、実用新案法二八条の「登録実用新案に係る物品の製造にのみ使用する物」には該当しない。なお、本件交換フィルターが本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の交換部品としての用途以外にも実用的と認められる用途を有していることは、被告代表者自身もその尋問において認めているところである。

五  第二・第三事件の争点五(原告相忠及び原告アーランドの故意・過失の有無並びに同原告らが被告に対し賠償すべき損害の額)について

【被告の主張】

1 原告相忠及び原告アーランドの故意・過失

原告アーランドの代表者は、かつて被告に勤務していたことがあり、本件考案の内容及び出願の経緯を熟知していた。そして、原告アーランドは、平成元年四月頃から販売店用のパンフレット(乙第四一号証)を添付して、「この度株式会社アーランドは、換気扇カバーの専門メーカーとして、発足致しました。」などと記載した挨拶文(乙第四二号証)を販売店に送付し、第一装置及び第一フィルターの製造、販売を全国規模で開始していたのであり、その卸販売先の中に原告カトーや原告相忠が含まれていた。したがって、原告アーランドの代表者としては、平成二年五月一六日開催の福岡県プラスチック工業会の定期総会の直後に株式会社タカギの専務取締役から本件考案につき出願公告がされた事実を知らされても(乙第三九号証、原告アーランド代表者)、もはや換気扇取り付け用フィルター装置の製造、販売業務から撤退できない状態になっていた。そのため、原告アーランドは、第一装置及び第一フィルターの製造、販売を続け、また、その後第一装置の在庫品の筒状枠体及び弾性取り付け装置をそのまま流用し、外周縁部にゴム紐を取り付けたキャップ式フィルターとセットにして第二装置として販売を継続したというのが事の真相と考えられる。以上の経緯に照らせば、原告相忠及び原告アーランドに本件実用新案権侵害に関する故意・過失のあることは明らかである。

2 原告相忠及び原告アーランドが被告に対し賠償すべき損害の額

(一) 第二事件・原告相忠関係の損害 一五〇万円

原告相忠の本件実用新案権(出願公告後で実用新案登録前のいわゆる仮保護の権利を含む。)侵害行為がなければ、被告は、本件考案の出願公告日である平成二年二月一日から現在までの間に、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置及び右装置用の交換フィルターの販売により少なくとも一五〇万円を下らない純利益を得られたはずである。ところが、原告相忠の本件実用新案権侵害行為により、被告は、右の得べかりし利益を喪失した。

そうでないとしても、原告相忠は、右期間中に第一ないし第三装置及び第一ないし第三フィルターの販売により、少なくとも一五〇万円を下らない純利益を得、被告は同額の損害を被った。

したがって、原告相忠は、被告に対し右金額を賠償すべき義務があるが、被告は本訴においてこのうち一〇〇万円を請求する。

(二) 第三事件・原告アーランド関係の損害 二〇〇〇万円

原告アーランドの本件実用新案権侵害行為がなければ、被告は、本件考案の出願公告日である平成二年二月一日から現在までの間に、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置及び右装置用の交換フィルターの製造、販売により少なくとも二〇〇〇万円を下らない純利益を得られたはずである。ところが、原告アーランドの本件実用新案権侵害行為により、被告は、右の得べかりし利益を喪失した。

そうでないとしても、原告アーランドは、右期間中に第一ないし第三装置及び第一ないし第三フィルターの製造、販売により、少なくとも二〇〇〇万円を下らない純利益を得、被告は同額の損害を被った。

したがって、原告アーランドは、被告に対し右金額を賠償すべき義務がある。

第四  争点に対する判断

(第一事件)

一  争点一(第二装置は本件考案の技術的範囲に属するか。)について

1 本件考案の構成要件Cの意義

本件考案の構成要件Cは、「折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え」というものであるところ、右文言自体、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を固定するという作用の行われる場所のみならず、その固定作用を発揮する仮止め手段が設けられる場所自体も、筒状本体部の後面開口縁部の内周面側にあることを意味すると解するのが、通常のごく平均的な理解であるだけでなく、以下のとおり、明細書及び図面の記載や本件考案の出願経緯に照らし、右のような文言を用いた出願人の技術的意図を参酌しても、本件考案は、交換フィルター部材の仮止め手段が筒状本体部の後面開口縁部の内周面にあることを必須の構成要件とすると解するのが相当である。

(一) 明細書及び図面の記載

本件考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の「考案の詳細な説明」の欄の〔問題点を解決するための手段〕の項には、本件実用新案登録請求の範囲の記載をそのまま繰り返した、「折り込まれた上記交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え」(公報2欄12行~14行)との記載があり、また、〔作用〕の項には、「該交換フィルター部材は上記筒状本体部に仮止め手段によって固定されているので、外す場合にはこの仮止め手段を外すことによって容易に交換フィルター部材を取り替えることができる。」(公報2欄24行~3欄2行)との記載があるだけであり、それ以上に具体的な構成に関する説明はない。

しかしながら、〔考案の効果〕の項には、本件考案そのものの効果として、「以上の説明からも明らかなように、換気扇への取り付け状態においては交換フィルター部材のみが表面に表れるのみであるため、筒状本体部や仮止め手段に油やほこりが付着することがなく、従って交換フィルター部材を単に新しいものと交換するだけですみ、迅速かつ手軽に交換作業を行うことができる様になり、しかも仮止め手段が筒状本体部の内部であるから油やほこり等の付着がなく、従って交換作業の際に手を汚すこともない等の効果がある。」(公報5欄2行~11行)と明記され、仮止め手段が筒状本体部の内部にあることの効果が強調されている。また、〔実施例〕の項には、仮止め手段の一実施例である嵌入枠体11に関して、「なおこの嵌入枠体11は嵌入すべき後面開口縁部17が丸形である場合は切欠円状のバネ材を用いることも可能であり、この場合は後面開口縁部17の内周面に抜け止め用の溝又は突起等の係止部を形成しておくことが望ましい。」(公報3欄28行~32行)、「まず床面に向けた交換フィルター部材13の中央部に筒状本体部12を裏返した状態に置き、次にその筒状本体部12の外表面を包み込む様に交換フィルター部材13の外周縁部21を持ち上げて後面開口縁部17の内周面20側に折り込んだ後、嵌入枠体11をその内側に嵌入すれば、折り込まれた交換フィルター部材13の外周縁部21が同嵌入枠体11の外周面と後面開口縁部17の内周面20との間に強く挟持された状態に仮止めされ、交換フィルター部材13が筒状本体12の外表面全体を囲撓(「囲繞」の誤記と認める〔甲第一二号証〕。裁判所注記)する状態に装着されるものである。」(公報3欄34行~4欄1行)との記載が、仮止め手段の他の実施例である面状ファスナー22に関して、「後面開口縁部17の内周面20側に折り込んだ交換フィルター部材13の外周縁部21を各面状ファスナー22の表面に強く押し付けるだけで固定することができ」(公報4欄12行~15行)との記載が、仮止め手段10に関して、「なお、仮止め手段10としては上記実施例に示すもの以外に、例えば両面テープやや(「や」の誤記と認める。裁判所注記)挟持クリップを用いたり、或いは多数の針状係止片による等種々の方法によることができるものであり、要は折り込まれた交換フィルター部材13の外周縁部21を筒状本体部12の後面開口縁部17の内周面20側において仮止め状態となし得るものであればよい。」(公報4欄19行~26行)との記載が、第4図(取り付け手段の一例を示す斜視図)に関して、「第4図は、以上の様に交換フィルター部材13が張設された本案装置を、換気扇14に取り付けるための取り付け手段23の一例を示すもので、コイルバネ部材24と換気扇14側に取り付けられる取り付け基板部25により構成され、同基板部25の裏面には感圧性接着剤層26を有し、表面中央部にはコイールバネ部材24の基端リング27を連結するためのフック28を有する。又、コイルバネ部材24の先端部には筒状本体部12に係合させるための鉤部29、及び手掛け用リング30を設けている。そこで、感圧性接着剤層26により基板部25を換気扇14の窓枠部16の前面又は側面に貼着し、コイルバネ部材24を引き延ばした状態で鉤部29を筒状本体部12に係合させることによって、筒状本体部12の後面開口縁部17を窓枠部16の前面に密着した状態に本案装置の取り付けがなされるものである。」(公報4欄27行~43行)との記載があり、本件考案にいう交換フィルター部材の仮止め手段が筒状本体部の後面開口縁部の内周面にあるもののみが示されており、これが筒状本体部の外側にあるものを含むことを示唆するような記載はなく、添付図面にもそのようなものを示すものは存しない。

そして、以上の本件明細書及び図面の記載に照らせば、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置を実際に換気扇本体に取り付けるに際しては、交換フィルター部材を仮止め手段によって筒状本体部に仮止めし、この一体となった装置を取り付け手段によって換気扇本体の窓枠部の前面に取り付けるものと解される。

(二) 本件考案の出願経緯

本件考案の出願経緯は以下のとおりであると認められる(証拠は各項目の末尾に挙示。)。

(1) 本件考案の出願当初の明細書には、実用新案登録請求の範囲として、「1 前面に所要本数の梁部材を渡設した横向き筒状本体部と、同筒状本体部の外表面部全体を囲繞し更に後面開口縁部内周面側に所要長さ折り込み可能な広さを有する交換フィルター部材と、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備えて成ることを特徴とする換気扇取り付け用フィルター装置。2 仮止め手段が面状ファスナーであり、同布製ファスナーを筒状本体部の後面開口縁部内周面側に取り付けて成る実用新案登録請求の範囲第1項記載の換気扇取り付け用フィルター装置。3 仮止め手段が嵌入枠体であり、同嵌入枠体外周面と筒状本体の後面開口縁部内周面との間に、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を挟持する様になした実用新案登録請求の範囲第1項記載の換気扇取り付け用フィルター装置。」と記載され、考案の作用効果に関して、「本考案によれば、換気扇への取り付け状態においては交換フィルター部材のみが表面に表われるのみであるため、筒状本体部や仮止め手段に油やほこりが付着することがなく、従って交換フィルター部材を単に新しいものと交換するだけですみ、迅速かつ手軽に交換作業を行うことができる様になり、しかも仮止め手段が筒状本体部の内部であるから同部分には油やほこり等の付着がなく、従って交換作業の際に手を汚すこともない等の効果がある。」(7頁15行~8頁6行)と記載されていた(甲第一号証)。

(2) 特許庁審査官は、昭和六三年四月二〇日付で、出願人の被告に対し、「この出願の考案は、その出願前国内において頒布された下記1~3の刊行物に記載された考案に基いて、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、きわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができない。

1 実願昭五一-七六六二七号(実開昭五二-一六七六六〇号)のマイクロフィルム

2 実願昭五五-四九一七三号(実開昭五六-一四九八三七号)のマイクロフィルム(仮止め手段が面状ファスナーである点)

3 実公昭五六-一八九〇八号公報(仮止め手段が嵌入枠体である点)」との拒絶理由通知を発した(甲第二号証)。

(3) これに対し、被告は、昭和六三年七月二九日付意見書を提出し、「本考案は換気扇に装着する筒状本体部の外表面全体を交換フィルター部材によって囲繞する」(2頁8行~10行)ものであり、「本考案では筒状本体部の後面開口縁部の内周面に任意間隔の下に面状ファスナーを取り付け、交換フィルター部材を、後面開口縁部の内周面側に折り込んだ交換フィルター部材の外周縁部を各面状ファスナーの表面に強く押し付け固定する、或いは交換フィルター部材の中央部に筒状本体部を裏返した状態に置き、次にその筒状本体部の外表面を包み込む様に交換フィルター部材の外周縁部を持ち上げて後面開口縁部の内周面側に折り込んだ後、嵌入枠体をその内側に嵌入すれば、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部が上記嵌入枠体の外周面と後面開口縁部の内周面との間に強く挟持された状態に仮止めするものであり、それに対し引例1考案では開口部の外周縁に鋸歯状の爪を多数設け、これにネット外周縁を引っかけるものであり、本考案と比較するに構成及び作用において大きな差異があると見受けられる。」(2頁13行~3頁10行)、「引例2考案は上記カバーの扉枠内側面にフィルターを仮止めする為に、換気扇カバーの枠及びカバーの扉枠それ自体は、フィルターによって覆われるのではなく、本考案の様に筒状本体部の外表面を囲繞する構成とは大きく異なる。」(3頁19行~4頁3行)、「本考案では、筒状本体部の外表面を交換フィルタ部材によって包み込み、その後に、上記筒状本体部内に嵌入枠体をその外周面と上記筒状本体部の後面開口縁部の内周面との間に強く挟持した状態で挿入し交換フィルタ部材を仮止めするものであり、上記引例3とは構成及び作用に大きな差異が見受けられる。」(4頁20行~5頁6行)、「以上で述べて来た様に、本考案では換気扇に取り付けられるカバーそれ自体の外表面を交換フィルタ部材によって被包することによって、カバーそれ自体が汚れることが無く、フィルタ部材のみを交換することだけで済むもの」(5頁7行~11行)であると主張した(甲第三号証)。

(4) しかし、特許庁審査官は、昭和六三年一〇月二八日付で、「この出願は、昭和六三年四月二〇日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものと認める。なお、意見書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。備考 本願の実用新案登録請求の範囲第1項に記載された考案と、第1引用例のものとの間に構成上格別の差異がない。」として、本件考案の出願について拒絶査定をした(甲第四号証)。

(5) 右拒絶査定に対し、被告は、昭和六三年一二月二七日付で審判請求をするとともに、平成元年一月二三日付手続補正書(実用新案法第五五条第二項で準用する特許法第一七条の二第四号の規定による補正)を提出した。被告は、右手続補正書において、当初明細書の実用新案登録請求の範囲の2項及び3項を削除し、同1項につき、冒頭に「前面に所要本数の梁部材を渡設した横向き筒状本体部と、……」とあったのを、「取付けようとする換気扇の正面を覆う」との記載を新たに付加して、「前面に所要本数の梁部材を渡設し、取り付けようとする換気扇の正面を覆う横向き筒状本体部と、……」と補正し、末尾に「……仮止め手段とを備えて成ることを特徴とする換気扇取り付け用フィルター装置。」とあったのを、「上記交換フィルター部材が上記筒状本体部の外側全面を覆う」との記載を新たに付加して、「……仮止め手段とを備え、上記交換フィルター部材が上記筒状本体部の外側全面を覆うことを特徴とする換気扇取り付け用フィルター装置。」と補正した。なお、作用効果に関しては、当初明細書の考案の作用効果に関する記載(甲第一号証7頁15行~8頁6行)の末尾の「……しかも仮止め手段が筒状本体部の内部であるから同部分には油やほこり等の付着がなく、従って交換作業の際に手を汚すこともない等の効果がある。」との記載のうち、「同部分には」の記載を削除したのみで、右補正により実質的な変更は加えていない(甲第五号証、第六号証)。

(6) 被告は、更に平成元年二月一三日付審判請求理由補充書を提出し、「取り付け手段においては、本考案では交換フィルター部材を後面開口縁部内周面側に所定長さ折り込んだ後、面状ファスナー、嵌入枠体あるいは両面テープ、クリップ等の仮止め手段によって該交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面に固定するものであります。従って、本件考案においては、仮止め手段が内側にあり、更には交換フィルター部材の外周縁部も内側にあるので、使用中に外れ難いという特徴を有します」(4頁14行~5頁4行)、「本件考案においては、交換フィルター部材が後面開口縁部まで覆っていて、該換気扇と後面開口縁部との間に交換フィルター部材が挟まれるので、これによっても強固に筒状本体部に取り付けられ、使用中に外れることが少ないという優れた効果も有しております。」(8頁11行~16行)と主張した(甲第七号証)。

(7) 以上のような経緯により、平成元年一〇月一八日、本件考案の出願について出願公告をすべきものとする旨の決定があり、平成二年八月一六日、「原査定を取り消す。本願の考案は、実用新案登録をすべきものとする。」との審決があり、同年一二月一二日実用新案登録を受けるに至った(甲第一二号証、第一四号証)。

以上の本件考案の出願経緯に、審査官指摘の引用例1(甲第一八号証)には、本件考案の当初明細書の実用新案登録請求の範囲1項に記載された考案(交換フィルター部材が筒状本体部の外側全面を覆うものであるかどうかは明確でない。)に対応する構成が示されており、また、引用例2(甲第一九号証)及び引用例3(甲第二〇号証)には、本件考案と構成が一部相違するものの、交換フィルター部材の仮止め手段として面状ファスナーや嵌入枠体を用いる構成が示されていることを併せ考えれば、本件考案は、交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部の内周面に折り込んで仮止め手段によって固定するものであり、それゆえに交換フィルター部材が筒状本体部の外側全面を覆うものである点において、従来の先行技術との間に差異があるものと認められて実用新案登録を受けたものと認められ、出願人の被告が出願当時認識していた本件考案の技術事項も右の限度に止まり、特許庁審査官指摘の拒絶理由を解消して本件考案について登録査定を受けるために、右の限度に意識的に限定して出願したものと認めざるを得ない。

(三) まとめ

以上によれば、本件実用新案登録請求の範囲の「折り込まれた上記交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え、」との記載は、交換フィルター部材の仮止め手段が、それ自体の構造については特に限定がなく、嵌入枠体、面状ファスナー、両面テープ、クリップ等の種々のものを想定し得るとしても、筒状本体部の後面開口縁部の内周面にあることを意味し、これが外側にあるものは含まないと解すべきである。

被告は、本件考案にいう仮止め手段は、折り込まれた交換フィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部の内周面側において仮止め状態となし得るものであれば、右筒状本体部の内側にあるものも、外側にあるものも含むものであると主張するが、前判示に照らし採用できないことは明らかである。

2 第二装置と本件考案の構成要件C

第二装置は、前記第二の四説示のとおり別紙物件目録(三)-一記載のとおりのものであって、「フレームが架設され、かつ換気扇の前面を覆う枠体と、前記枠体及びフレームを覆い、前記換気扇の側部又は後縁部で係止可能な広さの交換フィルターと前記交換フィルターの周縁部に設けられた収縮可能なゴム紐と、前記交換フィルターが前記枠体の外側全面を覆う」構造のものであり、そして、検甲第一号証、第四ないし第一五号証及び原告アーランド代表者の供述によれば、その換気扇本体への取り付けに際しては、まず弾性取付手段(フック)を換気扇の窓枠部の前面に固定し、この弾性取付手段によって枠体を換気扇の窓枠部の前面に取り付けた後、第二フィルターで枠体の前面から側部を覆い、かつ換気扇の窓枠部の側部を覆ってその側部又は後縁部の位置において、第二フィルターの周縁部に設けられたゴム紐により係止するものであると認められる。したがって、交換フィルター部材の仮止め、手段が筒状本体部の後面開口縁部の内周面にあるという本件考案の構成要件Cを充足しないというべきである。

被告は、(1)第二装置の交換フィルターである第二フィルターが換気扇の側部又は後縁部で係止可能な広さを有するということは、当然に枠体の外表面部全体を覆い、更に後面開口縁部の内周面側に折り込み可能な広さを有するということにほかならないから、第二フィルターは本件考案の交換フィルター部材に該当する、(2)そして、第二装置の枠体は、弾性取り付け装置によって換気扇本体に取り付けられているので、手で枠体を持って手前に引っ張ることにより換気扇本体から若干離すことができ、また、第二フィルターも、右のとおり枠体の外表面部全体を覆い、更に後面開口縁部の内周面側に折り込み可能な広さを有し、かつ、周縁部に収縮可能なゴム紐を設けているから、ゴム紐を伸ばして開口部を広げた状態で枠体に嵌めた後にゴム紐を放すことにより、第二フィルターを枠体の内側に折り込み装着することができ、そのような装着状態では、第二フィルターの周縁部をゴム紐で枠体の後面開口縁部内周面側に牽引し折り込んだ状態で固定することができる、と主張する。

右(1)の点については、被告主張のとおりである。

しかし、(2)の点については、第二装置を換気扇本体に取り付けるための弾性取付手段は換気扇の窓枠部前面に固定されるから、第二フィルターを枠体に装着する前に枠体を換気扇の窓枠部前面に設けられた弾性取付手段によって取り付けた後に、第二フィルターを枠体に装着することになるところ(第二フィルターを枠体に装着した後では枠体を弾性取付手段で取り付けることは実際上不可能になる。)、被告主張のように、手で(弾性取付手段によって換気扇本体に取り付けられた)枠体を持って手前に引っ張ることにより換気扇本体から若干離し、ゴム紐を伸ばして第二フィルターの外周縁部の開口部を広げた状態で枠体に嵌めた後にゴム紐を放すという操作は、理論的には可能であるが、通常部屋の壁の高い位置に設置される換気扇について、手で(弾性取付手段によって換気扇本体に取り付けられた)枠体を持って手前に引っ張って換気扇本体から若干離しつつ、第二フィルターを枠体に嵌めるという操作をすることは実際問題として困難といわざるを得ない。

したがって、第二装置においては、手で(弾性取付手段によって換気扇本体に取り付けられた)枠体を持って手前に引っ張って換気扇本体から若干離しつつ、第二フィルターを枠体に嵌めるという操作をすることは、通常の使用方法とは考えられないところ、現に、検甲第一号証によれば、第二装置のパッケージには、枠体に第二フィルターを被せた状態のものが複数のフック(弾性取付手段)とともに封入されているところ、その同封されている説明書には、フックは、換気扇前面に換気扇カバー(第二装置)のフレームの位置を確認の上貼り付けること、フィルター(第二フィルター)をカバー本体(枠体)から外してからカバー本体をフックのツメで内側より引っ掛けて固定すること、フィルターを換気扇本体の側面まで覆うように被せることが図とともに説明されていることが認められるから、第二装置を購入した消費者が、右のように説明されているにもかかわらず、あえて前記のような困難な使用方法をするとは考えられず、したがって、第二装置は、前示のとおり、まず弾性取付手段(フック)を換気扇の窓枠部の前面に固定し、この弾性取付手段によって枠体を換気扇の窓枠部の前面に取り付けた後、第二フィルターで枠体の前面から側部を覆い、かつ換気扇の窓枠部の側部を覆ってその側部又は後縁部の位置において、第二フィルターの周縁部に設けられたゴム紐により係止するものであり、弾性取付手段によって枠体を窓枠部の前面に取り付ける前に第二フィルターを枠体に装着するような使用方法は想定されていないものといわなければならない。

被告は、また、右のように第二フィルターを換気扇の窓枠部の側部又は後縁部に係止することにつき、換気扇本体の後部に物件目録(三)-一の図面に示されるような切欠部を形成すると、その部分に油や埃が溜まるから市販されている家庭用換気扇で右のような切欠部が形成されている製品は存在しないし、切欠部が形成されていない家庭用換気扇の本体に右図面に示されるように第二装置フィルターを装着すると、ゴム紐の係止部がないため、ゴム紐が次第にずれてきて第二フィルターが換気扇本体から外れるか、あるいはフレームに引っ掛かって膨れた状態になり、見掛けが極めて悪く、到底市場で販売可能な商品とはなり得ない旨主張するが、なるほど、市販の換気扇で右のような切欠部を意図的に設けた製品が存在するとの事実を認めるに足りる証拠はないものの、原告アーランド代表者の供述によれば、実際に換気扇を壁に設置する際、換気扇の窓枠部の後縁部と壁との間にことさら隙間を設けることを意図しなくても、二mm程度の隙間が空くことが多く、この場合にはその隙間に、第二フィルターの周縁部に設けられたゴム紐を係止することが可能であることが認められ、仮に右のような隙間が全くなく、換気扇の窓枠部の後縁部が壁にピッタリ密着して取り付けられた場合でも、第二フィルターで枠体の前面から側部、換気扇の窓枠部の側部を覆って壁際にゴム紐を係止することが可能であり、そして、その場合でも、使用時において換気扇による空気の流れのため第二フィルターは枠体に吸い付けられた状態になるから、ゴム紐の収縮力により、第二フィルターが枠体から外れたりフレームに引っ掛かって膨れた状態になるとは認められない。

被告は更に、原告アーランドは「換気扇カバーとその取付構造」という名称の考案につき平成元年六月一三日に実用新案登録の出願をしているが、その公開実用新案公報(乙第三一号証)によれば、交換フィルターの取付方法は、原告らが本訴で主張する方法ではなく、被告主張の方法と同じであると主張するが、乙第三一号証によれば、右考案に係る換気扇カバーの取付構造(実用新案登録請求の範囲第2項)は、「換気口に着脱自在に取り付けられた長尺状支持部材により、請求項1(換気口に取り付けられる換気扇カバーであって、該換気扇カバーが、フィルターと、該フィルターの周縁部に設けられ、かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有することを特徴とする換気扇カバー。裁判所注記)記載の換気扇カバーが支持された状態で取り付けられていることを特徴とする換気扇カバーの取付構造。」というものであり、その実施例(明細書七頁末行以下及び換気扇カバーの取付構造を示す第3図、第4図)は、換気口周囲の枠部材(窓枠部)に格子状支持部材を縦方向に着脱自在に取り付け、該支持部材で支持された状態で換気扇カバーを取り付けるもので、格子状支持部材の両端部はL字状に折曲されているとともに、換気口周囲の枠部材との当接部には、面ファスナーや粘着材が取り付けられており、格子状支持部材は枠部材に対して着脱自在である、というものであって、フィルターの周縁部に設けられた紐状体は格子状支持部材の後縁部で係止するものが示されていることが認められるのであって、フィルターの周縁部を格子状支持部材の内側に折り込むようなものでも、格子状支持部材の内周面にフィルターの仮止め手段があるというものでもない。

以上のように、被告の主張は、いずれも採用することができない。

そして、第二装置は、前示のような構造を有するが故に、少なくとも本件考案では奏し得ない原告ら主張の〈1〉及び〈2〉の作用効果(第三の一1(二))を奏するものと認められる。

3 結論

以上によれば、第二装置は本件考案の技術的範囲に属さず、原告らが業としてこれを製造、販売することは本件実用新案権を侵害するものではない。したがって、被告は右製造、販売の差止請求権を有しないことは明らかであり、被告がその点を争っていることはいうまでもないから、原告らの第一事件の請求のうち、差止請求権不存在確認請求は理由がある。

二  争点二(被告による本件書面配付行為等につき不法行為が成立するか。成立する場合、被告が原告カトーに対し賠償すべき損害の額)について

1 前記第二の一〇のとおり、被告は、平成三年一二月頃、原告アーランドの取引先である株式会社藤村に対し、本件和解調書の写しを添付して、「当社所有の実用新案に抵触している『換気扇取付用フィルター装置及び交換フィルター』を取扱いしていました株式会社ニチイ様が今般、別紙の和解文の様に当社の権利を侵害していることを認めましたので、報告致します。これを機に何卒当社の換気扇・レンジフードカバー、フィルターの取扱いを前向きにご検討賜り度くお願い申し上げます。」と記載した本件書面を配付したものであり(本件書面配付行為)、また、第二装置は本件考案の技術的範囲に属さず、原告らが業としてこれを製造、販売することは本件実用新案権を侵害するものではないことは、前項において認定判断したとおりである。

2 しかして、原告カトーは、被告による不法行為の内容として、まず、原告カトー及び原告相忠が業として第二装置を販売する行為が本件実用新案権を侵害するとして同原告らに対し右装置の販売中止を要求したこと、あるいは、原告相忠、原告アーランドに対し、それぞれ第二、第三事件を提起したこと自体を主張するようであるが、実用新案権者において相手方の販売する製品が自己の実用新案権の技術的範囲に属するとの判断のもとに、当該相手方に対し、右製品の販売中止を要求することは、後に裁判所によって右製品が実用新案権の技術的範囲に属さないとされ、結果的に右判断が誤りであったことが明らかになったからといって、格別の事由の認められない限り、不法行為とはならないというべきところ、本件においては、右格別の事由は認あられないから不法行為が成立するとはいえず、また、原告相忠、原告アーランドに対する第二、第三事件の提起は、そもそも原告カトーに対するものではないし、前項の認定判断における説示に徴すれば、その提起が裁判制度の趣旨目的に照ちして著しく相当性を欠くというような場合には当たらないことが明らかであるから、右訴えの提起自体が独立して原告カトーに対する不法行為になることはないというべきである(右販売中止の要求は、第三者に対するものではないから、その余の点について検討するまでもなく、不正競争防止法二条一項一一号にいう営業誹謗行為にも該当しない。)。

また、原告カトーは、被告は平成二年一〇月頃から原告カトーの取引先に対しても原告カトーとの取引の中止を求めたと主張するが、本件全証拠によるも、かかる事実は認められない(乙第四三号証、原告カトー代表者の供述、被告代表者の供述によれば、原告カトーは原告アーランドから仕入れた換気扇取り付け用フィルター装置をすべてニチイに販売していること、すなわち、換気扇取り付け用フィルター装置を含む全商品につき、原告カトーの取引先〔販売先〕はニチイのみであること、被告がニチイに対して第二装置の販売中止を求めたことはないこと、なお、株式会社藤村は、原告カトーと同様に、原告アーランドから換気扇取り付け用フィルター装置を仕入れて卸販売している問屋であり、原告カトーとの間では全く取引がないことが認められる。)。

3 そこで、被告による本件書面配付行為等につき検討するに、前記第二の九の本件和解の和解条項によれば、原告カトー及びニチイは、本件和解において、第一装置及び第一フィルターを販売しないこと、第一装置及び第一フィルターの廃棄、和解金五〇万円の支払いを約したものではあるが、第一装置及び第一フィルターの販売が本件実用新案権を侵害するものであることを明確に認めたわけではなく、また、物件目録により対象物件が第一装置及び第一フィルターと特定されてはいるものの、本件書面の本文中では、対象物件を単に「当社所有の実用新案に抵触している『換気扇取付フィルター装置及び交換フィルター』」と記載しているだけであるから、右記載は、原告らが既に平成二年二月頃から本件考案の技術的範囲に属さない第二装置及び第二フィルターを製造、販売していたにもかかわらず、株式会社藤村(知的所有権について専門的知識を有すると認めるに足りる証拠はない。)に対しては、あたかも原告カトー及びニチイの販売する換気扇取り付け用フィルター装置及び交換フィルターのすべてが本件実用新案権の侵害品であるかのような印象を与えかねないものであるから、本件書面の記載が不適切、不正確であったことは否めないところである。

しかして、原告カトーは、被告が原告カトーの最大の取引先であるニチイ及び原告カトーを共同被告として第一装置及び第一フィルターの販売差止を求めた別件訴訟において本件和解を成立させたが、その当時には原告アーランドは既に第二装置の販売を開始しており、原告カトーも、第二装置は本件実用新案権に全く抵触しないとの認識の下に、和解成立後はニチイとの間で第二装置を対象とする取引を再開することを予定していたにもかかわらず、被告が原告相忠及び原告アーランドに対し、順次第二装置の製造、販売が本件実用新案権の侵害になるとして第二・第三事件の差止請求訴訟を提起し、更には原告アーランドの取引先である株式会社藤村に対し本件書面を配付する行為に及んだので、原告カトーとしては、ニチイとの間の第二装置の取引再開に際しては、同社が安心して取引再開に踏み切れるよう、本件和解成立後の経過をニチイの担当者に説明する必要があったため、被告による原告相忠及び原告アーランドに対する訴え提起の事実はもとより、本件書面配付の事実も報告せざる得なかった結果、ニチイは、そのような事実がある以上、換気扇取り付け用フィルター装置については安心して取引できないとの社内判断に至り、第二装置を対象とする取引はその後も一切再開されないままの状況が続いている旨主張し、被告による右のような原告相忠及び原告アーランドに対する第二・第三事件の提起並びに原告アーランドの取引先である株式会社藤村に対する本件書面の配付をもって不法行為として、そのため原告カトーがニチイとの間で第二装置の取引再開をできなかったことによる逸失利益をもって損害と主張する。

しかしながら、前示のとおり本件書面の記載が不適切、不正確であったことは否めないところであるが、被告が右のように原告相忠及び原告アーランドに対して第二・第三事件を提起したこと(これ自体が独立して原告カトーに対する不法行為とならないことは前記2説示のとおりである。)並びに原告アーランドの取引先である株式会社藤村(原告カトーと同様に、原告アーランドから換気扇取り付け用フィルター装置を仕入れて卸販売している問屋であり、原告カトーとの間では全く取引がないことは前示のとおりである。)に対して本件書面を配付したことと、原告カトーがニチイとの間で第二装置の取引再開をできなかったこととの間に、相当因果関係があるということはできない。

したがって、被告の右各行為につき不法行為の成立は認められないから、原告カトーの第一事件における損害賠償請求は、理由がない。

(第二・第三事件)

一  争点一(第二装置は本件考案の技術的範囲に属するか。)について

第一事件の争点一についての判断において説示したとおり、第二装置は本件考案の技術的範囲に属するものということはできない。

したがって、被告の原告相忠に対する第二事件の請求のうち、第二装置の販売が本件実用新案権を侵害するものであることを前提とする第二装置の販売の差止請求及び廃棄請求並びに損害賠償請求、原告アーランドに対する第三事件の請求のうち、第二装置の製造、販売が本件実用新案権を侵害するものであることを前提とする第二装置の製造、販売の差止請求及び廃棄請求並びに損害賠償請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく理由がない。

二  争点二(第一・第三装置は本件考案の技術的範囲に属するか。)について

第一装置と第三装置は、それぞれ別紙物件目録(一)と(五)に記載のとおりのものであり、両者の構成は、筒状本体部が前者では伸縮不可能であるのに対し後者では伸縮可能である点で相違することを除き、同じであって、両者に共通する構成は以下のとおり分説できるものである(各部の番号は別紙物件目録(一)と(五)の添付図面記載の番号である。)。

a 金属製枠体〈1〉の前面に金属線からなる梁部材〈2〉を掛け渡して形成した筒状本体部〈3〉と、

b 該筒状本体部〈3〉の外表面部全体を囲繞して筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さを有するフィルター部材〈4〉と、

c 折り込まれた前記フィルター部材〈4〉の外周縁部〈5〉を筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側において固定する面状ファスナー〈6〉とからなり、

d 前記フィルター部材〈4〉は前記筒状本体部〈3〉の外表面部全体を被覆して装着されている

e 換気扇取り付け用フィルター装置。

そこで、第一・第三装置と本件考案とを対比すると、第一・第三装置は、共にフィルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定しており、その構成aないしeは順次本件考案の構成要件AないしEを充足する(したがって、前記第二の一3記載の本件考案の作用効果と同じ作用効果を奏する。)ものと認められるから、第一・第三装置は本件考案の技術的範囲に属するというべきである。

三  争点三(原告相忠及び原告アーランドは、現在第一・第三装置を製造、販売しているか。将来そのおそれがあるか。)について

被告は、原告らは現在第二装置のみならず第一・第三装置も製造、販売しており、今後も製造、販売を継続するおそれがあるとし、そのことは、原告ら主張の時点(平成二年二月一日)以降に被告及びその関係者が第一・第三装置を市場で購入している事実から明らかである(乙第一五号証~第一九号証、第二〇号証の1・2、第二一号証~第二三号証、検乙第一号証~第六号証、第七号証の1・2、第一〇号証)旨主張するが、被告援用の右各証拠によって認められる各購入事例は、時期的にも場所的にもかなり散発的なものであるとの印象を払拭できないこと(しかも、その購入商品のうち、金属製枠体を使用しているのは検乙第一号証、第五号証、第七号証の1・2の商品のみであり、別紙物件目録(一)と(五)の記載に照らすと、厳密な意味で第一・第三装置に該当するのは右検乙号各証の商品のみということになる。その余の物は、たとえ同一構造を有していても、プラスチック枠体を使用している。)、原告アーランド代表者本人が、第一装置については平成二年三月頃以降、第三装置については平成三年初め以降製造、販売を中止したが、第一・第三装置のいずれについてもそれまでに市場での流通に置いた商品の回収作業は殆ど行わなかった旨供述していること、原告アーランドが平成四年一二月頃に配付した「換気扇カバーのご案内」(乙第二五号証)の換気扇カバー本体の一覧表では、前記金属製枠体を用いた製品の品番(A-21〔検乙第一号証、第五号証〕、A-43〔検乙第七号証の1・2〕)は挙げられていないことに照らすと、結局、本件考案の出願公告日である平成二年二月一日以降については、原告アーランド代表者の右供述により原告相忠及び原告アーランドは第一装置を平成二年三月頃まで、第三装置を平成三年初めまで製造、販売したことが認められるにとどまり、右各購入事例のみから、第一装置については平成二年三月頃以降、第三装置については平成三年初め以降現在まで原告相忠及び原告アーランドがこれを製造、販売しているとの事実を推認することはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

しかしながら、原告相忠及び原告アーランドは、右のとおりかつて第一・第三装置を製造、販売したことがあり、第一・第三装置が本件実用新案権の技術的範囲に属することを本件訴訟において争っていること、原告アーランド代表者の前記供述によって認められる第一・第三装置の製造、販売の中止後も、それまでに市場での流通に置いた第一・第三装置の回収作業も殆ど行わず、同原告らの第一・第三装置の製造、販売の中止の大きな理由も、本件訴訟の動向を見守るためであるとみる余地もあること及び弁論の全趣旨に照らすと、なお将来、同原告らが右各装置の製造、販売をするおそれがあると認めるのが相当であり、被告の第二・第三事件の請求のうち、原告相忠又は原告アーランドに対する第一・第三装置の製造、販売の差止請求は、将来の予防請求の趣旨も包含しているものと解されるから、右差止請求は理由がある。

但し、現在、第一・第三装置を原告相忠及び原告アーランドが所持していることを認めるに足りる証拠はないから、原告相忠又は原告アーランドに対する第一・第三装置の廃棄請求は理由がないというべきである。

四  争点四(第一ないし第三フィルターは、本件考案に係る換気扇取り付け用フイルター装置の製造にのみ使用する物か。)について

まず、第ニフィルターは、第二装置の枠体に装着されて枠体とともに第二装置(全体)を構成するものであるところ、争点一について判断したところによれば、第二装置(全体)は本件考案の技術的範囲に属さず、業としてこれを製造、販売することは本件実用新案権を侵害するものではないから、被告の第二・第三事件の請求のうち、右侵害を前提とする原告相忠又は原告アーランドに対する第ニフィルターの製造、販売の差止請求及び廃棄請求並びに損害賠償請求は、既にこの点において失当というべきである。

次に、第一・第三フィルター(別紙物件目録(二)と同目録(六)を対比すると、両者は実質的に同じ構造のものと認められるので、以下では、両者をまとめて「本件交換フィルター」と称したうえで、一括して考察することとする。)については、これを第一装置又は第三装置の筒状本体部に装着した第一・第三装置(全体)が本件考案の構成要件AないしEをすべて充足し本件考案の技術的範囲に属するものであることは前記二説示のとおりであるから、被告主張のように本件交換フィルターが第一・第三装置すなわち本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造にのみ使用する物であるか否かについて検討する。

本件交換フィルターは、全体が四角形又は円の単純な形状からなるものであるところ、証拠(甲第二三号証~第二八号証、第三四号証、第三五号証、乙第二六号証、検甲第二八号証~第三一号証、検乙第八号証、第九号証、第一一号証、原告アーランド代表者)及び弁論の全趣旨によれば、原告アーランドの製造、販売に係る本件交換フィルター及び第二フィルターは、いずれも換気扇取り付け用フィルター装置から独立して別売商品として単体で販売されていること、そして、本件交換フィルター(検甲第二八号証、検乙第八号証、第九号証、第一一号証)のパッケージの表面には、「レンジフード 換気扇カバー 交換用 難燃特殊フィルター 他メーカー使用可」と大きく表示され、その下に、換気扇取り付け用フィルター装置とエアコンのイラストが描かれ、右エアコンのイラストの横に、「エアコンのフィルターにも使えますサイズを大きさに合せて切って下さい。」との説明が付されており、また、裏面には、「換気扇以外に、クーラー・空気清浄機・ウィンドファンなどの機器にも、幅広くご利用いただけます。フリーサイズは、ご希望のサイズに切ってご使用いただけます。」と記載されていること(但し、検乙第九号証については、「空気清浄機」の代わりに「温風ヒーター」と記載されている。)、また、右パッケージの中に同封されている「換気扇カバー交換用フィルターのご案内」と題する書面(乙第二六号証)には、「このフィルターは、通気性・集塵性・吸着性・難燃性等の角度から検討して製品化しておりますので、換気扇やレンジフード用フィルターはもとより、クーラー・暖房機・温風ヒーター・ウィンドファン等のエアコン類や、金魚の水のろ過フィルター等にも、いろいろな用途にご利用いただけます。」と記載されていること、実際にも、原告らと被告以外の第三者メーカーの製造、販売に係る、本件考案の技術的範囲に属さない換気扇取り付け用フィルター装置(アルミ製換気扇カバー)の中には、そのフィルターの代わりに本件交換フィルターを装着して使用可能な製品があり(甲第二四号証)、換気扇自体に羽根の前面を覆う遮蔽枠の設けられたタイプの換気扇については、格別の換気扇取り付け用フィルター装置(枠体)を使用することなく、直接本件交換フィルターのみを換気扇に装着することができ(甲第二三号証)、また、本件交換フィルターをエアコンのフィルタ~として使用することも可能であること(甲第二五号証)、原告らと被告以外の第三者メーカーからも、換気扇、エアコン、レンジフードのいずれのフィルターとしても使用可能であると銘打った、本件交換フィルターと同様の交換フィルターが発売されており(検甲第三〇号証、第三一号証)、原告らと被告とは全く無関係の業者が配付しているチラシの中にも、本件交換フィルターと同様の交換フィルターをレンジフードやエアコンに使用することを推奨しているものがあり(甲第三四号証)、生活情報誌の中には、市販のキッチンフィルターを換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルターとして使用することを推奨しているものがある(甲第三五号証)こと、さらに、一般消費者や販売店からも原告アーランドに対し、本件交換フィルターを、他メーカーの換気扇取り付け用フィルター装置の交換フィルターとして使用したい(第二七号証)、レンジフード用の交換フィルターとして使用したい(甲第二八号証)、あるいは農業用(育苗用)に使用したい(甲第二六号証)として購入申込がなされていることが認められ、右認定事実によれば、本件交換フィルターは、本件考案の技術的範囲に属さない換気扇取り付け用フィルター装置にも装着可能であり、あるいは換気扇のタイプによっては単独で直接換気扇に装着することができるだけでなく、エアコンやレンジフード等の、換気扇取り付け用フィルター装置以外の製品にも装着して交換フィルターとして使用できるという商業的、経済的に実用性のある用途をも有するものといわなければならないから、本件考案に係る物品の製造にのみ使用する物には該当しないといわざるを得ない。これに反する被告の主張は失当という外はない。

この点につき、被告は、原告らは本件交換フィルターを被告の製造、販売している交換フィルターと全く同一のサイズ(適用本体〔S・M・L〕に対応する各サイズ)に裁断加工して販売している旨主張し、右サイズの同一性の点については原告らも特に争ってはいない。

しかしながら、証拠(甲第二九号証~第三二号証、第四六号証)及び弁論の全趣旨によれば、松下電器産業株式会社、株式会社東芝、三洋電機株式会社、三菱電機株式会社等の我が国の大手家電メーカーの製造、販売に係る家庭用換気扇の外形寸法の規格は、おおむね、日本工業規格の規定するところに従い、羽根の直径で一五cm、二〇cm、二五cm、三〇cmの各サイズ、それに対応して壁部への埋込寸法(取付け穴の内のり寸法)で一七・五cm角、二五cm角、三〇cm角、三五cm角の各サイズというように統一されていることが認められるから、これらの換気扇に取り付けられる換気扇取り付け用フィルター装置に装着される交換フィルターも、自ずから換気扇の各サイズに対応したものにならざるを得ず、その裁断サイズが複数の交換フィルターのメーカーの間で同じになったとしてもあながち不自然なこととはいえないのであって、本件交換フィルターの各サイズが被告の交換フィルターの各サイズと全く同一であるからといって、本件交換フィルターが本件考案の技術的範囲に属する第一・第三装置に装着して使用される以外の商業的、経済的に実用性のある用途をも有するとの前記認定を何ら左右するものではない。

したがって、被告の第二・第三事件の請求のうち、本件交換フィルターが本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置の製造にのみ使用する物であることを前提とする原告相忠又は原告アーランドに対する本件交換フィルターの製造、販売の差止請求及び廃棄請求並びに損害賠償請求は理由がない。

五  争点五(原告相忠及び原告アーランドの故意・過失の有無並びに同原告らが被告に対し賠償すべき損害の額)について

本件考案の出願公告日である平成二年二月一日以降については、原告相忠及び原告アーランドが、第一装置を平成二年三月頃まで、第三装置を平成三年初めまでそれぞれ製造、販売したことが認められるにとどまり、同原告らが、第一装置については平成二年三月頃以降、第三装置については平成三年初あ以降これらを製造、販売した事実が認められないことは前示のとおりである。

そうすると、原告相忠及び原告アーランドは、本件考案の出願公告日である平成二年二月一日以降も、第一装置については同年三月頃まで、第三装置については本件考案の実用新案登録日である同年一二月一二日を越えて平成三年初めまで、それぞれ製造、販売していたものであり、前示のとおり、第一・第三装置は本件考案の技術的範囲に属するから、原告相忠及び原告アーランドは被告の本件実用新案権(但し、実用新案登録日前はいわゆる仮保護の権利)を侵害したことになるところ、実用新案法三〇条、特許法一〇三条により同原告らには右侵害行為について過朱があったものと推定される。

そこで、原告相忠及び原告アーランドが被告に対し賠償すべき損害の額について検討するに、被告は、同原告らの本件実用新案権侵害行為がなければ、本件考案の出願公告日である平成二年二月一日から現在までの間に、本件考案に係る換気扇取り付け用フィルター装置及び右装置用の交換フィルターの販売により、原告相忠との関係では少なくとも一五〇万円(第二事件)、原告アーランドとの関係では少なくとも二〇〇〇万円(第三事件)を下らない純利益を得られたはずであるところ、同原告らの本件実用新案権侵害行為により、被告は右の得べかりし利益をいずれも喪失した旨主張するが、本件において同原告らの侵害行為とされるものは、平成二年二月一日から第一装置については同年三月頃まで、第三装置については平成三年初めまで、それぞれ製造、販売したことにとどまるものであり、被告代表者の供述その他の本件全証拠によるも、右侵害行為がなければ被告は右期間中に一五〇万円あるいは二〇〇〇万円の純利益を得られたとの事実は認められない(一般に、商品の販売量は登録実用新案の存在のみによって決定されるものではないし、特に換気扇取り付け用フィルター装置等のいわゆるアイデア商品業界では同種商品について多数の業者が競合し販売競争を展開していることは周知の事実であり、しかも、最近では大手家電メーカー等も、右のような業者に任せることなく、自ら自社の製造、販売に係る換気扇に適合する換気扇取り付け用フィルター装置及び右装置用の交換フィルターを販売している〔甲第二九号証~第三三号証〕のであるから、原告相忠及び原告アーランドによる第一・第三装置の製造、販売がなければ、被告が同種の被告商品を同数量販売できたというような関係が成り立つとは到底考えられない。被告は、右主張が認められないとしても、右期間中に第一ないし第三装置及び第一ないし第三フィルターの製造、販売により、原告相忠は少なくとも一五〇万円(第二事件)、原告アーランドは少なくとも二〇〇〇万円(第三事件)を下らない純利益を得、被告は同額の各損害を被った旨主張するが(実用新案法二九条一項)、本件実用新案権の侵害行為である平成二年二月一日から同年三月頃までの間における第一装置の製造、販売、及び右平成二年二月一日から平成三年初めまでの間における第三装置の製造、販売により、原告相忠が一五〇万円、原告アーランドが二〇〇〇万円の純利益を得たとの事実を認あるに足りる証拠はない。したがって、右各主張はいずれも採用することができない。

しかし、前示のとおり(第二の八1の(一)(2)及び(二)(2))、被告は、右各主張が認あられない場合は、予備的に、本件考案の実施料相当額をもって自己の受けた損害の額と主張するものと解されるところ、他に的確な資料の存しない本件においては、本件考案の内容及び弁論の全趣旨を総合し、第一・第三装置の製造、販売に対する本件考案の右期間中の実施料相当額は、原告相忠については(第二事件)一〇万円、原告アーランドについては(第三事件)五〇万円と認めるのが相当である。

したがって、被告の第二・第三事件の請求のうち、第一・第三装置の製造、販売による本件実用新案権侵害を理由とする原告相忠(第二事件)又は原告アーランド(第三事件)に対する各損害賠償請求は、右各金額の支払を求める限度において理由があるが、その余は理由がない。

第五  結語

以上の次第で、第一事件については、原告らの差止請求権不存在確認請求を認容し、原告カトーのその余の請求(損害賠償請求)を棄却することとし、第二事件については、原告相忠に対する第一・第三装置の販売差止請求を認容し、損害賠償請求は、原告相忠に対し一〇万円及びこれに対する平成三年一〇月一八日(第二事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の各請求(第二装置及び第一ないし第三フィルターの販売差止請求、第一ないし第三装置及び第一ないし第三フィルターの廃棄請求、損害賠償請求中右金額を超える部分)を棄却することとし、第三事件については、原告アーランドに対する第一・第三装置の製造、販売差止請求を認容し、損害賠償請求は、原告アーランドに対し五〇万円及びこれに対する平成三年一一月二二日(第三事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の各請求(第二装置及び第一ないし第三フィルターの製造、販売差止請求、第一ないし第三装置及び第一ないし第三フィルターの廃棄請求、損害賠償請求中右金額を超える部分)を棄却することとする。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 小澤一郎 裁判官 本吉弘行)

〈12〉実用新案公報(Y2) 平2-4352

〈51〉Int.Cl.3F 24 F 7/00 識別記号 Z 庁内整理番号 6925-3L 〈24〉〈44〉 平成2年(1990)2月1号

〈54〉考案の名称 換気贏取り付け用フイルター装置

審判 平1-293 〈21〉実願 昭58-92010 〈65〉公開 昭59-195436

〈22〉出願 昭58(1983)6月14日 〈43〉昭59(1984)12月26日

〈72〉考案者 渡辺健司 福岡県北九州市小倉北区緑ケ丘3丁目6番9号

〈73〉出願人 カースル産業 株式会社 福岡県北九州市小倉北区緑ケ丘3丁目6番9号

〈74〉代理人 弁理士 中前富士男

審判の合議体 審判長 稻垣良 審判官 三浦均 審判官 尾みや子

〈58〉参考文献 実開 昭52-167660(JP、U) 実開 昭58-149837(JP、U)

実公 昭56-18908(JP、Y2)

〈57〉実用新案登録請求の範囲

前面に所要本数の梁部材を渡設し、取付けようとする換気扇の正面を覆う横向き筒状本体部と、同筒状本体部の外表面部全体を囲撓し更に後面開口縁部内周面側に所要長さ折り込み可能な広さを有する交換フイルター部材と、折り込まれた上記交換フイルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え、上記交換フイルター部材が上記筒状本体部の外側全面を覆うことを特徴とする換気扇取り付け用フイルター装置。

考案の詳細な説明

〔産美上の利用分野〕

本考案は、主に各家庭において使用される換気扇の油汚れ防止を目的とする換気扇取り付け用フイルター装置の改良に関するものである。

〔従来の技術及びその問題点〕

従来この種のフイルター装置としては種々の構造のものが存在するが、従来のものはいずれもフイルター装置の本体部や交換フイルター部材を同本体部に張設状態に固定するための枠体等の表面が露出したままの構造であつたため、その露出面にも油やほこりが付着し、交換フイルター部材交換の際に手を汚してしまうばかりでなく、交換の度に本体部や枠体表面の洗浄作用をも余儀なくされるという煩わしさがあつた。そこで本考案ではかかる問題点を解消し、交換フイルター部材の交換作業が手軽に行える換気扇取り付け吊フイルター装置を提供することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的に沿う本考案に係る換気扇取り付は用フイルター装置は、前面に所要本数の梁部材を渡設し、取付けようとする換気扇の正面を覆う横向き筒状本体部と、同筒状本体部の外表面部全体を囲撓し更に後面開口縁部内周面側に所要長さ折り込み可能な広さを有する交換フィルター部材と、折り込まれた上記交換フイルター部材の外周縁部を筒状本体部の後面開口縁部内周面側において固定する仮止め手段とを備え、上記交換フイルター部材が上記筒状本体部の外側全面を覆うようにして構成されている。

〔作用〕

本考案に係る換気扇取り付け用フイルター装置においては、交換フイルター部材が取付けようとする換気扇の正面を覆う横向き筒状本体部を囲繞し、更には後面開口縁部内周面側に所定長さ折り込み可能な広さを有しているので、上記筒伏本体部外側全体の汚れが防止される。

該交換フイルター部材は上記筒状本体部に仮止め手段によつて固定されているので、外す場合にはこの仮止め手段を外すことによつて容易に交換フイルター部材を取り替えることができる。

〔実施例〕

以下、本考案に係る換気扇取り付け用フイルター装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。

第1図~第4図は交換フイルター部材の仮止め手段10として嵌入枠体11を用いた本考案の一実施例を示すもので、図において、12は横向き筒状本体部、13は交換フイルター部材、14は換気扇を示す。

上記筒状本体部12は換気扇14の窓穴15の形状に応じて円筒状や角筒状をなし、かつ窓枠部16の前面に後面開口縁部17が当接すべき形状大きさに形成されると共に、その前面開口部18は所要本数の梁二材19が建設される。

交換フイルター部材13は通気性を阻害しない度の目の荒い不布状の性維等によつて形成し、前記筒状本体部12の外表面部全体を囲し更にその後面口縁部17の内周面20側に要長さ折り込み可能な広さを有する。

交換フイルター部材13の仮止め手段10を構成する嵌入枠体11は嵌看すべき筒状本体部12後面開口縁部17の形状に合わせた丸形や角形形成され、その外径を前記開口縁部17の内径りやや小さ目に形成されており、必要に応じて嵌入枠体11内をに梁部材(図示せず)により補する。なおこの嵌入枠体11は嵌入すべき後面口縁部17が丸形である場合は切欠円状のバネを用いることも可能であり、この場合は後面開縁部17の内周面に抜け止め用の溝又は突起等係止部を形成しておくことが望ましい。

本実施例では上記構成より成るため、交換フイター部材13の取り付けをなすには、まず床面向げた交換フイルター部材13の中央部に筒状体部12を裏返した状態に置き、次にその筒状体部12の外表面を包み込む様に交換フイルタ部材13の外周縁部21を持ち上げて後面開口部17の内周面20側に折り込んだ後、嵌入枠11をその内偶に嵌入すれば、折り込まれた交フイルター部材13の外周縁部21が同嵌入枠11の外周面と後面開口縁部17の内周面20の間に強く挟持された状態に仮止めされ、交換イルター部材13が筒状本体12の外表面全体を囲撓する状態に装着されるものである。又、汚れた交換フイルター部材13の取り外し作業は嵌入枠体11を取り外すのみで簡単かつ迅速に行い得るものである。

次に、第5図は交換フイルター部材13の仮止め手段11として面状フアスナー22を用いた場合の他の実施例を示すものであり、筒状本体部12の後面開口縁部17の内周面20に任意間隔の下に面状フアスナー22を取り付けたものである。

従つて本実施例における交換フイルター部材13の取り付け作業は、後面開口縁部17の内周面20側に折り込んだ交換フイルター部材13の外周縁部21を各面状フアスナー22の表面に強く押し付けるだけで固定することができ、又取り外し作案も少し力を入れて引つ張るだけで容易に面状フアスナーより剥がすことができるものである。

なお、仮止め手段10としては上記実施例に示すもの以外に、例えば両面テープやや持クリツブを用いたり、或いは多数の針状係止片による等種々の方法によることができるものであり、要は折り込まれた交換フイルター部材13の外周縁部21を筒状本体部12の後面開口縁部17の内周面20側において仮止め状態となし得るものであればよい。

第4図は、以上の様に交換フイルター部材13が張設された本案装置を、換気扇14に取り付けるための取り付け手段23の一例を示すもので、コイルバネ部材24と換気扇14側に取り付けらる取り付け基板部25により構成され、同基板部25の裏面には感圧性接着剤層26を有し、表面中央部にはコイルバネ部材24の基端リング27を連結するためのフツク28を有する。又、コイルバネ部材24の先端部には筒状本体部12に係合させるための鉤部29、及び手掛け用リング30を設けている。。そこで、感圧性接着剤層26により基板部25を換気扇14の窓枠部16の前面又は側面に貼着し、コイルバネ部材24を引き延ばした状態で鉤部29を筒状本体部12に係合させることによつて、筒状本体部12の後面開口縁部17を窓枠部16の前面に密著した状態に本案装置の取り付けがなされるものである。

〔考案の効果〕

本考案に係る換気扇取り付け用フイルター装置以上の説明からも明らかなように、換気扇へのり付け状態においては交換フイルター部材のみ表面に表れるのみであるため、筒状本体部や仮め手段に油やほこりが付着することがなく、従て交換フイルター部材を単に新しいものと交換するだけですみ、迅遠かつ手軽に交換作業を行うとができる様になり、しかも仮止め手段が筒状体部の内部であるから油やほこり等の付着がな、従つて交換作業の際に手を汚すこともない等効果がある。

面の簡単な説明

第1図は本考案の一実施例を示す分解状態の斜図、第2図は同取り付け状態の斜視図、第3図は同取り付け状態の断面図、第4図は取り付け手段の一例を示す斜視図、第5図は本考案の他の実施例を示す一部切欠斜視図である。

10……仮止め手段、11……嵌入枠体、12……筒状本体部、13……交換フィルター部材、14……換気扇、15……窓穴、16……窓枠部材、17……後面開口縁部、18……前面開口部、19……梁部材、20……内周面、21……外周縁部、22……面状フアスナー、23……取付け手段、24……コイルバネ部材、25……取付け基盤部、26……感圧性接着剤層、27……基端リング、28……フツク、29……鉤部、30……手掛け用リング。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

物件目録(一)

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置A。

一 図面の説明

第1図は換気扇取り付け用フィルター装置を後面の開口側から斜あに見た状態を示す斜視図であり、下部のフィルター部材の折り込み部を一部切り欠いて示している。第2図は換気扇取り付け用フィルター装置のフィルター部材と筒状本体部を分解した斜視図、第3図は前記換気扇取り付け用フィルター装置の換気扇への取り付け状態を示した斜視図、第4図は前記換気扇取り付け用フィルター装置を換気扇に取り付ける際に使用する取り付け器具を示す拡大斜視図である。

二 構造の説明

主に各家庭において使用される換気扇の油汚れ防止を目的として換気扇に取り付けられる換気扇取り付け用フィルター装置Aであり、金属製枠体〈1〉の前面に金属線からなる梁部材〈2〉を掛け渡して形成した筒状本体部〈3〉と、該筒状本体部〈3〉の外表面部全体を囲続して筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さを有するフィルター部材〈4〉と、折り込まれた前記フィルター部材〈4〉の外周縁部〈5〉を筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側において固定する面状ファスナー〈6〉とからなり、前記フィルター部材〈4〉は前記筒状本体部〈3〉の外表面部全体を被覆して装着されている。なお、〈7〉は換気扇取り付け用フィルター装置Aを換気扇〈8〉に取り付ける際に使用する取り付け器具であり、第4図に示すように底面に接着テープ〈9〉を設けた基板〈10〉にコイルバネ〈11〉を連結し、該コイルバネ〈11〉の先端にフック〈12〉を設け、該フック〈12〉をフィルター部材〈4〉に引っ掛けることにより前記フィルター装置Aを換気扇〈8〉に取り付けるものである。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

物件日録(二)

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルター。

一 図面の説明

図面は換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルターを示す斜視図である。

二 構造の説明

難燃性のポリエステル繊維製不織布で形成され、換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の外表面部全体を囲続して後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さに形成されている。なお、交換用フィルターには、S(縦三五センチメートル、横三五センチメートル)、M(縦四一センチメートル、横四一センチメートル)、L(縦四六センチメートル、横四六「センチメートル)、丸M(直径三五センチメートル)の四種類がある。

物件目録(三)-一

別紙図面に示す、フレームが架設され、かつ換気扇の前面を覆う枠体と、前記枠体及びフレームを覆い、前記換気扇の側部又は後縁部で係止可能な広さの交換フィルターと、前記交換フィルターの周縁部に設けられた収縮可能なゴム紐と、前記交換フィルターが前記枠体の外側全面を覆うことを特徴とする換気扇取り付け用フィルター装置。

〈省略〉

物件目録(三)-二

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置A。

一 図面の説明

図面は換気扇取り付け用フィルター装置Aを後面の開口側から斜めに見た状態を示す斜視図であり、下部のフィルター部材の折り込み部を一部切り欠いて示している。

二 構造の説明

主に各家庭において使用される換気扇の油汚れ防止を目的として換気扇に取り付けられる換気扇取り付け用フィルター装置Aであり、合成樹脂製枠体〈1〉の前面に合成樹脂からなる梁部材〈2〉を掛け渡して形成した筒状本体部〈3〉と、該筒状本体部〈3〉の外表面部全体を囲続して筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さを有するフィルター部材〈4〉と、折り込まれた前記フィルター部材〈4〉の外周縁部〈5〉を筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側において固定する伸縮性紐状体〈6〉とからなり、前記フィルター部材〈4〉は前記筒状本体部〈3〉の外表面部全体を被覆して装着されている。

〈省略〉

物件目録(四)-一

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルター。

〈省略〉

物件目録(四)-二

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルター。

一 図面の説明

図面は換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルターを示す斜視図である。

二 構造の説明

難燃性のポリエステル繊維製不織布で形成され、換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の外表面部全体を囲続して後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さに形成され、かつ、外周縁部〈1〉には伸縮性紐状体〈2〉が固着され、その中央部を残して外周縁部〈1〉が全周にわたって内方へ折曲した開口部〈3〉を有する袋状に形成されている。

〈省略〉

物件目録(五)

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置A。

一 図面の説明

第1図は換気扇取り付け用フィルター装置を後面の開口側から斜めに見た状態を示す斜視図であり、下部のフィルター部材の折り込み部を一部切り欠いて示している。第2図は換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部を伸長した状態を示す斜視図であり、第1図と同様に下部のフィルター部材の折り込み部を一部切り欠いて示している。

二 構造の説明

主に各家庭において使用される換気扇の油汚れ防止を目的として換気扇に取り付けられる換気扇取り付け用フィルター装置Aであり、金属製枠体〈1〉の前面に金属線からなる梁部材〈2〉を掛け渡して形成した筒状本体部〈3〉と、該筒状本体部〈3〉の外表面部全体を囲続して筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さを有するフィルター部材〈4〉と、折り込まれた前記フィルター部材〈4〉の外周縁部〈5〉を筒状本体部〈3〉の後面開口縁部内周面側において固定する面状ファスナー〈6〉とからなり、前記フィルター部材〈4〉は前記筒状本体部〈3〉の外表面部全体を被覆して装着されている。なお、この換気扇取り付け用フィルター装置Aは、幅の広い換気扇にも使用できるように筒状本体部〈3〉が伸長可能に形成されている。また、フィルター部材〈4〉は、筒状本体部〈3〉を伸長させた状態でその外表面部全体を囲続した後後面開口縁部内周面側に折り込みが可能な広さに形成されている。なお、換気扇に取り付ける際にはフィルター部材〈4〉の一端部に余裕が生じるが、その余裕部分は第1図に示すように筒状本体部〈3〉の後面側に折畳んで使用するものである。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

物件目録(六)

別紙図面に示す換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルター。

一 図面の説明

図面は換気扇取り付け用フィルター装置の交換用フィルターを示す斜視図である。

二 構造の説明

難燃性のポリエステル繊維製不織布で形成され、換気扇取り付け用フィルター装置の筒状本体部の外表面部全体を囲続して後面開口縁部内周面側に折り込み可能な広さに形成されている。

フィルター部材

〈省略〉

実用新案公報

〈省略〉

〈省略〉

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